弁護士 浅野 由花子
亡くなった親の遺品から、何十年も前に作成された遺言書が見つかった、あるいは何十年も前に公正証書遺言を作っていたと判明したが、親は生前、その内容とは異なる相続の希望を話していた・・・
あなたに財産を残すという希望を生前は話していたため納得いかない・・・
このような場合、存在さえ忘れていた古い遺言書に従わなければならないのでしょうか。
結論として、遺言者が遺言書の存在を忘れていたとしても、それだけで遺言が無効になるわけではありません。
遺言は、遺言者が亡くなった時から効力を生じます。
もっとも、遺言はどのような方法でもよいわけではなく、民法の定める方式に従って作成する必要があります(民法960条)。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など、法律上認められた形式を満たしていなければ、原則として遺言としての効力は認められません。
そのため、口頭での発言、録音、録画、または単なる心情を記した「遺書」などは、法律上の遺言としての効力を持ちません。
したがって、遺言者が作成した遺言を忘れて別の意向を口にしていたとしても、書面による適式な手続きがない限り、その発言が遺言を上書きすることはありません。
遺言者は、生存中であればいつでも遺言を撤回できます(民法1022条)。
ただし、撤回するためにも法律上の方法が必要です(民法1023条、1024条)。
例えば、後に別の遺言を作成し、その内容が前の遺言と矛盾する場合には、矛盾する部分について前の遺言が撤回されたものとみなされます。
また、遺言の対象となった財産を生前に売却した場合や、遺言者が故意に遺言書を破棄した場合にも、矛盾する場合について撤回が認められることがあります。
一方で、「やはり長女に相続させたい」「前の遺言とは違う分け方にしたい」と家族に話していただけでは、通常、遺言を撤回したことにはなりません。
詳しくはこちらのページをご覧ください
遺言の訂正と撤回 https://www.nagoyasogo-souzoku.com/yuigon/cancel/
遺言書の内容を変更したい! https://www.nagoyasogo-souzoku.com/qanda/yuigon-01/
遺言書の記載が曖昧で、複数の解釈が考えられる場合には、生前の発言や遺言作成当時の事情が、遺言者の真意を判断するための資料になることがあります。
しかし、これは遺言書の内容をどのように解釈するかという問題です。
遺言書の内容が明確である場合に、方式を満たさない口頭での発言だけで、その効力を否定することは原則としてできません。
遺言書が古い、忘れられていたというだけでは無効になりません。
もっとも、日付や署名などの方式に不備がある場合、本人が作成したものではない場合、作成当時に認知症などにより遺言能力がなかった場合、後に別の遺言が作成されていた場合などには、遺言の有効性が問題となることがあります。
そのため、古い遺言書が見つかった場合には、作成方法や作成時の状況、その後の遺言や財産処分の有無を確認する必要があります。
しかし、遺言の作成時期が昔であればあるほど、当時の遺言書の作成状況に問題があったことを裏付ける証拠を集めることは、通常困難となってまいります。
遺言者が遺言書の存在を忘れ、生前に異なる相続の希望を話していたとしても、それだけで遺言が無効になるわけではありません。
適式に作成された遺言は、後の遺言、生前の財産処分、遺言書の破棄などの事情がない限り、撤回されたとは認められず、原則として有効です。
もっとも、遺言書の方式、作成当時の遺言能力、後の遺言の有無などによっては、その有効性が問題となる場合もあります。
遺言が有効かどうかは、最終的には個別の事情や証拠を踏まえて裁判所が判断することになるため、弁護士に相談した場合であっても、明確な見通しを示すことが難しいことがあります。
そのため、遺言書の内容が生前に聞いていた希望と異なる場合には、遺言の有効性を争う余地があるか、争う場合にどのような証拠が必要となるか、相続手続をどのように進めるべきかなど、今後の対応方針を検討するために、弁護士等へ相談することをおすすめします。
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