弁護士が分かりやすく解説!
遺産分割の手続きの流れやよくあるトラブルとは?
遺産分割とは
故人の遺産の分け方を決めることを遺産分割と呼びます。
遺産分割に期限はありませんが、そのまま放置してしまうと後々トラブルに巻き込まれる可能性があるので出来るだけ早期の対応が求められます。
故人の口座は銀行が死亡を知ったタイミングで凍結されてしまうため、預金の引き出しができなくなるだけではなく、公共料金の引き落とし等ができなくなります。
夫が亡くなり預金を引き出そうと銀行の窓口に赴いたが、そこで意図せず口座を凍結されてしまったためにお金が引き出せなかった、なんてこともあります。
その他にも、不動産の売却が出来ない状態なのに固定資産税や管理費用を支払わなければならない等のデメリットに見舞われる可能性があります。
遺産分割の流れ
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- 1
遺言書の有無、あった場合は有効であるかの確認
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- 2
相続人の特定
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- 3
遺産の特定・評価
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- 4
相続税の計算
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- 5
遺産分割協議
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それぞれの遺産を分割
おおまかな遺産分割の流れは上の図の通りです。下記で詳しく解説していきます。
①遺言書の有無、あった場合は有効であるかの確認
遺言書を発見した際には、それが法的に有効であるかの確認が必要です。
特に専門家立会いのもとで書かれていない遺言書(自筆証書遺言)の場合は、民法で定められた様式に基づいて作成されていないこともあり、その場合には無効な遺言書となります。
「終活」の一環としてエンディングノートを作成する人もいますが、エンディングノートに記載された内容は遺言と違って法的拘束力を持たないので注意です。
また、遺言書の開封は「家庭裁判所で相続人全員の立会いの中で行われるもの」と法律で定められているため、勝手に開封すると罰則の対象となってしまいます。(※)
※遺言書の種類によって家庭裁判所での開封(検認)が必要かどうかが変わります。詳しくはこちら
遺言検認の申し立ては誰にお願いできる?
※ △司法書士・・・代理申請はできない
遺言検認の申し立ては弁護士と司法書士が対応できます。しかし司法書士は代理申請ができません。
②相続人の特定
相続人の範囲については民法で規定されており、遺産を受け継ぐ資格のある人のことを「法定相続人」と呼びます。これは亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取り寄せることで確認が可能です。
子供の数、認知した子供、養子の有無などを調べ、もし子供がいない場合は、父母や兄弟の戸籍を調べていきます。
※相続人の範囲について詳しくはこちら
ただし、相続では遺言書の内容が最も優先されるため、法定相続人以外の方でも、遺言書に記載がある場合は相続を受けられます。
相続人の特定は、相続手続きの根幹となる作業ですので、調査に不備があった場合にはその後の手続きが最初からやり直しになる可能性もあります。
相続人の調査は誰にお願いできる?
③遺産の特定・評価
亡くなった方の財産は、プラスの財産(不動産や金融資産など)だけではありません。マイナスの財産(借金など)を含め、すべてを正確に把握し、評価する必要があります。
複数の遺産があることが分かっている場合は、財産目録を作成することも検討しましょう。
不動産や株式は絶えず価値が変化するので、損をしないためには正しい知識が求められます。
また、このような評価が難しい遺産は紛争に発展しやすいことに留意しなければなりません。
※遺産分割の対象となる遺産について詳しくはこちら
遺産の調査は誰にお願いできる?
④相続税の計算
相続税には基礎控除という、いわば「非課税枠」が決められていて、この控除額を遺産総額が上回らない限り相続税が課されることはありません。
しかし、相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日(通常、亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署に対しておこなわなければならないという決まりがありますので、早期の対応が求められます。
税理士の中には、会社の決算業務や法人税申告を主な業務としており相続税実務の経験が乏しい者も少なくありません。
相続においては、相続税の知識だけでなく膨大な民法とその関連法規である不動産登記法や借地借家法など不動産法の知識とその実務経験が問われます。
相続税に精通した税理士に依頼することが望ましいでしょう。
相続税の申告は誰にお願いできる?
※ △弁護士・・・国税局長に税理士業務を行う旨の通知をした弁護士は可能
※相続税額計算シミュレーションはこちら(当事務所別サイトへ遷移します)
⑤遺産分割協議
相続にあたり法定相続人全員で話し合うことを遺産分割協議といいます。
この協議で話がまとまらなかった場合には、家庭裁判所による調停や審判に進んで分割方法を決定することとなります。
遺産分割協議が成立したら「誰が」「どの財産を」「どれだけ取得するか」を記載し、全員が署名のうえ実印で押印して遺産分割協議書を作成します。
相続人の中に参加が難しい相続人がいる場合には下記のページを参考にして下さい。
※遺産分割協議について詳しくはこちら
※遺産分割協議書について詳しくはこちら
遺産分割協議書の作成は誰にお願いできる?
※△税理士・司法書士・行政書士・・・遺産分割協議での代理交渉や、その交渉をまとめた遺産分割協議書の作成は弁護士のみ可能
紛争案件の介入、解決は誰にお願いできる?
※△司法書士・・・認定司法書士のみ、140万円以下の遺留分侵害額請求に関する対応等が可能
⑥それぞれの遺産を分割、名義変更等の手続き
遺産を具体的に分割する方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」および「共有とする方法による分割」があります。
現物分割
それぞれの遺産をそのままの状態で分けることを現物分割といいます。
代償分割
一部の相続人が遺産を取得する代わりに他の相続人には金銭を支払う方法です。
換価分割
遺産を売却することで換価した売却後の利益を、相続人の間で分配する方法です。
共有とする方法による分割
遺産をそのまま共有する方法です。ただしこの方法は遺産分割を先延ばしにしているだけにすぎませんので基本的にはその他3つの分割方法を選択することをおすすめします。
※それぞれの分割方法の詳細と注意点はこちら
不動産の名義変更は誰にお願いできる?
預貯金の解約払い戻しは誰にお願いできる?
有価証券の名義変更は誰にお願いできる?
遺産分割でよくあるトラブル
トラブル① 遺言書に記載された内容に納得できない
亡くなった父の遺言書に「長男にすべての遺産を相続させる」と記載されていました。私には遺産を相続する権利はないのでしょうか。
上記のようなケースに遺産分割を進める方法は3つあります。
遺言書の無効を主張する
遺言書が有効であるかを確認します。
民法の様式に沿って作成されていなかったり、作成された時点で認知症の疑いがあり意思能力に問題があったと医学的に判断される場合などです。そのような場合には、遺言書が無効となり、法的拘束力を持たなくなります。
遺産分割協議
「相続財産をどのように分けるか」について、相続人全員で話し合って決めます。全員の合意があれば遺産分割協議により分割が可能です。
遺留分侵害額請求
亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人は、一定割合の相続をすることができます。遺言書などで、遺留分を侵害するような相続が行われたときは、「遺留分侵害額請求」をすることにより、その範囲内で遺留分を請求することができます。
※画像はクリック(またはタップ)で拡大することができます。
※各相続人の遺留分の割合や計算について詳しくはこちら
遺留分侵害額請求には「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年」という時効が存在するため、できるだけ早く書面で遺留分侵害額請求の意思表示を行った方が良いでしょう。
トラブル② 不動産の評価額に納得できない
母の死亡後、長男がその実家を相続し住み続ける代わりに代償金を受け取ることになりましたが、その金額が適正なものか分かりません。
不動産は一般的に分割しにくく評価も難しいうえ、その評価金額によって代償金の多寡が変わってきますので、金融資産と比べると紛争の原因となりやすい財産です。
不動産の評価にはいくつかの方法がありますが、主な争点となるのは以下のどちらかを採用するかです。
時価(実勢価格)
複数の不動産会社に査定してもらったり、不動産鑑定士に依頼して調べます。
遺産分割協議や遺産分割調停や遺産分割審判で合意に至らなかった場合には、実勢価格を使用しますが客観的な証拠として確実に有効になるのは不動産鑑定士の鑑定書です。
不動産鑑定士に依頼するデメリットとしては、鑑定に時間を要することと数十万の鑑定料が挙げられます。
不動産を高く評価したい立場の場合、時価で不動産を評価したほうが有利に働きますが、不動産鑑定士に鑑定を依頼してから他の相続人の同意を得られなかったときには、時間とお金を浪費してしまう結果になる可能性があるので、他の相続人の同意を得てから進める必要があるでしょう。
また調停や審判では、裁判所が鑑定士を選任します。
相続税評価額
相続税の計算時に使用する評価額です。路線価方式もしくは倍率方式で計算され、価格は時価の8割程度であるとされます。国税庁の路線価図で簡単に確認することができます。
不動産を相続し他の相続人に代償金を支払う場合には時価より低く評価されるこちらを適用した方が有利ですが、他の相続人からの反発が考えられます。
評価の方法が違えば賠償額にも差が出ます!
例)相続人がAとBの2人いる場合、相続人Aが家を相続したとします。AはBへ、相続した家の評価額の半分のお金を支払う『代償分割』を選択しました。
ここで問題になってくるのは、評価の方法が違えば、AがBに支払う額に大きな差が出てしまうことです。
上の例では、時価と相続税評価額には375万円の差が発生しています。
相続人同士の争いにならないようにしっかりと話し合いをする必要があります。
相続の問題は複数の専門領域にまたがっています
相続の問題は、遺産分割・遺留分侵害額請求・遺言書の作成などの相続対策等の法律問題にとどまらず、複数の専門領域にまたがる複合的な対策が必要です。
誰に相談したらいいかお悩みの場合は、下記のチャートからご確認ください。
遺産分割相談おすすめチャート
あなたにおすすめなのは…
『弁護士+司法書士』です!!
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あなたにおすすめなのは…
『弁護士』です!!
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あなたにおすすめなのは…
『行政書士または司法書士』です!!
※遺産に不動産がある場合
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あなたにおすすめなのは…
『弁護士+司法書士・行政書士』です!!
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あなたにおすすめなのは…
『税理士』です!!
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あなたにおすすめなのは…
『税理士+司法書士』です!!
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弁護士への相談がオススメのケース
- 遺産分割に応じない人がいる
- 相続人の中に行方不明者がいる
- 遺産を使い込んでいる可能性がある相続人がいる
- 介護に関わった人や、生前贈与を受けた相続人がいる
司法書士への相談がオススメのケース
- 遺産分割協議書の作成・登記相続手続
- 遺産に不動産がある
- 相続人同士での争いが発生していない
行政書士への相談がオススメのケース
- 相続人同士での争いが発生していない
- 遺産分割協議書のみを作成してもらいたい
- 親の店を継ぐので、許認可の申請をしたい
相続人同士の争いがなく、不動産の遺産がない場合には行政書士に遺産分割協議書を作成してもらうのが費用を低く抑えたい方にはオススメです。
しかし、遺産分割協議書作成以降の相続の手続きについては他の士業にバトンタッチすることになるため、弁護士・司法書士よりも狭く限定した業務しか行えません。
ただし、店を継ぐ場合など許認可が必要な場合、専門家である行政書士に書類作成と申請を依頼することとなります。
税理士への相談がオススメのケース
- 相続税の申告の必要がある
- 各種税の相続対策がしたい
当事務所での解決事例
多額の遺産相続の紛争解決と相続税申告までをサポートした事例
Aさんの父(被相続人)は不動産、預貯金等合わせて1億円以上の遺産を残して亡くなりました。
父の配偶者であるBさんは、相続開始直後から遺産を独り占めしようする動きを見せているだけではなく、相続発生間もないころから頻繁に相続の連絡をしてきました。
Bさんに不信感があったAさんは弊所にご相談にいらっしゃいました。
遺産の特定・評価
調査の結果、Bさん側から開示された金融機関の預貯金以外にも相手方も把握していなかった預貯金があることを発見しました。不動産については、現地調査に赴き現況確認と活用可能性等についても検討しました。
また、Bさんが被相続人の死亡前後に被相続人の預貯金を費消している可能性があったため、その点についても調査を行い内容を精査しました。
遺産分割協議
Aさんの希望である法定相続分にしたがった分割協議案を提示しました。
Aさんも相手方も不動産の取得を希望しなかったため、売却可能な不動産は売却し現金化した上で全遺産の法定相続分に該当する金額の分与をすることで合意に至りました。
相続税の申告
本件は相続税申告が必要な案件であったため、弊所の税理士と連携して被相続人の死亡から10か月以内に相続税申告を済ませました。
遺産分割協議の内容が相続税申告の内容にも影響するため、必要に応じて弁護士と税理士が同席のもとで打合せも行いました。
他の相続人から嫌がらせを受けることは珍しいことではありません。
弁護士をはさむことによって直接連絡をしなくて済むようになりますので、精神的な負担がいくらか解消されることにも繋がるでしょう。
相続税申告が必要な案件では、専門的な知識を持った税理士の協力が不可欠です。
弊所では相談の段階から税理士と連携を図り、弁護士による相談の他に税務関係のみの相談を税理士が行うこともあります。
個人の対応では難しいところもありますので、早期から弁護士・税理士等の専門家に相談しましょう。
名古屋総合法律事務所では各士業が連携しています!
生前の相続対策から実際に相続が発生した後まで柔軟に対応できる各士業がチームを組んで対応いたします!
事案ごとに事務所を探し、契約を交わす必要がありませんので、場合によっては時間と費用を節約できる可能性があります。
まずはお気軽にご相談ください。
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0120-758-352
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ご予約の際に「夜間相談または土曜相談を希望します」とお伝えください。
面談のご相談は初回60分無料
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