相続に強い名古屋市の弁護士の遺産分割,遺留分,遺言,相続税の相談｜愛知県

Q.夫が死亡しました。子供はおらず、両親は既に死亡しています。夫には既に死亡した兄がおり、兄の子2人が相続人です。
自宅のマンションは夫名義のため、私の名義に変更したいです。兄の子らに手紙を送ったものの無視されています。どうしたらよいですか？

お兄さんの子二人（甥や姪）は、夫よりも先に兄が死亡している場合、代襲相続（民法889条2項、民法887条2項）により相続人となっています。そこで、遺産分割協議（民法907条1項）をしない限り、遺産が誰に帰属するかを確定することができません。

遺言書があり、その内容としてご相談者様にマンションを相続する旨記されていれば、遺産分割協議の必要はなく、マンションの名義変更も行えます。しかし、今回は遺言書がないケースに見受けられます。

遺産分割協議は話し合いです。相続人全員で集まって話し合う必要があります。しかし、甥や姪が手紙を無視しており、話し合いができない状態になっているようです。そうしますと、話し合いでは、ご相談者様の単独の名義に変更することは難しそうです。

話し合いができないので、家庭裁判所で遺産分割調停や審判の申し立てをする必要があります。

1 調停

(1) 手続

協議ができない場合、家庭裁判所で遺産分割を行うことになります（民法907条2項）。まず、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることが考えられます。仮に審判をしてもらいたい、というときであっても、まずは調停に付されます（家事事件手続法257条）。
調停は、家庭裁判所が間に入ってくれますが、相続人全員の合意が必要であることに変わりはありません。

(2) 主張する内容

遺産分割方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割といった方法があります。自宅のマンションをご相談者様の名義にしたい場合、自宅マンションは現物分割で自己名義にすることを主張することが考えられます。その場合、他の遺産を甥や姪に譲るか、金銭を代償として支払うといった、現物、代償の組み合わせが有効的です。

また、妻として、夫の「財産の維持又は増加について特別の寄与をした」として、寄与分の主張をすることも考えられます（904条の2）。これが認められると、相続できる割合が増えます。もし甥や姪に夫からの生前贈与など特別受益があれば、これを主張することで他の相続人が取得できる割合が増える可能性もあります。

2 審判

(1) 手続

調停が整わない場合は、遺産分割審判手続に移行し、家庭裁判所の判断に委ねられることなります。

(2) 内容

家庭裁判所の判断に当たっては「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情」（民法906条）が考慮されます。そのため、思ったような内容にならないこともよくありますので、審判になったときは、この点に注意が必要です。

まずは遺産分割調停を申し立ててみましょう。今回のケースは、夫が遺言書を作っておけば兄弟姉妹には遺留分がないことから、様々なトラブルを回避できたはずですが、そのことを考えなければ、裁判所の手続きをとるしかないでしょう。