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あるところに、Aさんという年配の男性がいました。AさんにはBさんとCさんという2人のお子さんがいました。妻に先立たれたAさんは、 Bさんに同居してもらい、生活の面倒をみてもらっていました。CさんはAさんと別居しており、お盆と正月に顔を合わせていました。
Aさんが亡くなり、相続の話がもちあがりました。Aさんは堅実な性格で、生前は結構な額の預貯金を蓄えていました。ところが、 Aさんの死後、Cさんが通帳を見てみると、なんと不自然に預貯金額が目減りしているではありませんか。Aさんがお金をたくさん使っていたようには思えません。
一方で、Aさんと同居していたBさんは高額なブランド物の衣服を買うなど贅沢な生活を送っていましたし、Bさんの子どもが学費のかかる私立の大学に進学しています。Cさんは思いました。
「もしかして、Bのやつ、父さんの預金を使い込んだのか……???」
という事例を考えます(もちろんフィクションです)。
Cさんの法定相続分は2分の1です(民法900条4号)。もしBさんがAさんの預貯金を使い込んだのだとすれば、 Cさんとしては残りの預貯金の半分しかもらえないというのでは釈然としません。Bさんが使い込んだ分を返してもらうことはできないのでしょうか。
返してもらう方法として、Cさんが、Bさんに対して、不当利得返還請求をすることが考えられます。
民法703条は、
この「法律上の原因のない利得」を不当利得と言います。不当利得を返還してもらう権利を、「不当利得返還請求権」と言います。
民法703条によれば、
また、民法704条は、
法律用語における「悪意」とは、「知っていた」ということを意味します。自分が不当に利得をしていることを知っていた者は、 不当利得に利息を付けて返さないといけない、損害がある時は賠償の責任を負う、ということです。
では、Cさんにこの不当利得返還請求権があるのでしょうか。使い込まれたのはAさんの預貯金であって、Cさんのものではありません。Cさんには不当利得返還請求権はないのではないでしょうか。
厳密にいえば、不当利得返還請求権がある可能性があるのはAさんです。Aさんの預貯金が使われたので、損失が生じたのはAさんだからです。 ➀Bさんが利益を得た ➁Aさんに損失が生じた ➂Bさんが利益を得たことでAさんに損失が生じた(➀と➁の因果関係)、➃Bさんの利益に法律上の原因がない といえれば、 AさんはBさんに対して不当利得返還請求権を有することになります。
この不当利得返還請求権をBさんとCさんが相続します。金銭債権は当然に法定相続分通りに相続することになるので(東京地判令和3年9月28日、最判昭和29年4月8日)、 Cさんは不当利得返還請求権のうち、法定相続分である2分の1を相続します。たとえば、引き出された預貯金が500万円であれば、250万円の返還を請求できることになります。
この不当利得返還請求権を行使するには、様々な壁が立ちはだかります。
BさんがAさんの預金をおろしていたとしても、そのおろしたお金をAさんの治療費や生活費に使っていればBさんの利得とはいえません。
Bさんがおろした額と、Aさんの持つ診療報酬明細書やレシートを照らし合わせることができればよいのですが、そういった書類を管理しているのは同居している Bさんであることが多いため、別居しているCさんにとっては至難の業です。
ただ、引き出された額があまりも高額で、かつ、Bさんが用途について合理的な説明が できないと、引き出された額すべてがAさんのために使われたわけではないと判断されることもあります。
もしBさんがAさんの預貯金をおろしていたとしても、Aさんが承諾していたり、預貯金をおろすことをBさんに委託していたりした場合は、法律上の 原因がないとは言えません。そして、法律上の原因がないことは、不当利得の返還を請求する側が立証しなくてはなりません(最判昭和59年12月21日)。
「ない」ことの証明は大変です。主張としては、Aさんは認知症などによって意思能力がなく、承諾したとは考え難いことや、承諾したとしても無効であることが考えられます。 施設や病院の診療録などを使って立証します。
また、Aさんの従前の預貯金の管理状況や使用状況から、預貯金はBさんが勝手に引き出した可能性が高いことを主張することも考えられます。
法律論からは離れますが、相続にからむ不当利得返還請求訴訟においては感情的な対立が生じることがよくあります。Aさんと同居していたBさんからすれば、 CさんもAさんの子どもであるにもかかわらず、自分がAさんの世話を一手に担っていたのに、Cさんがお金だけを請求するのは良い気分がしません。
一方で、Cさんからすれば、自分もBさんも同じAさんの子どもであるのに、BさんだけがAさんの預金を使うことに対して不満が生じます。 どちらの言い分もそれなりに筋が通っているだけに、当事者だけでの問題解決は難しくなります。
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