弁護士 杉浦 恵一
耳慣れない言葉かと思いますが、相続の分野では、「再転相続」というものがあります。
これは、まず最初に相続が発生し、その相続の相続人が、相続を承認するか放棄するか選ぶことのできる期間を経過する前に亡くなってしまい、重ねて相続が発生してしまう、という状態を指します。
この場合、2番目の相続人は、最初に亡くなった方と2番目に亡くなった方の相続人の立場に、同時になることになります。
民法上では、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認、限定承認、もしくは相続放棄のいずれかをしなければならないとされています(民法915条)。
また、この3か月以内に限定承認または相続放棄をしなければ、単純承認をしたとみなされてしまいます(民法921条)。
再転相続の場合、民法上では、916条で以下のように定められています。
「相続人が相続の承認または放棄をしないで死亡したときは、前条(注:915条)第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」
このような再転相続に関して、令和元年8月9日、最高裁判所である判断が出されました。
この事件は、強制執行のための執行文というものの付与に対する異議が申し立てられた事件です。
概要としては、X銀行がY会社に貸し付けていた金銭の保証人Aが、平成24年6月に死亡し、その妻や子が相続放棄をしたことで、兄弟姉妹が相続人となった事案でした。
その兄弟姉妹のうち1人(B)は、Aの相続人となったことを知らなかったので、Aの相続の単純承認も相続放棄もしておらず、そのまま平成24年10月に亡くなってしまいました。
その妻と子(C)が、今回の事件の当事者です。
その後、平成27年になって、強制執行をするための執行文が付与され、それに関する郵便が裁判所からCに届いたことによって、初めてCは、自分がAの相続人であることを知ったことから、相続放棄をするとともに、この執行文の付与に異議を申し立てた、という事案でした。
今回の事件では、このような再転相続があり、Aからの相続に関して、Cの熟慮期間(3か月の考慮期間)がいつから開始するかが争われました。
この点に関して、最高裁判所は、
相続の承認または放棄の制度が、相続人に対して、権利義務の承継を強制する制度ではなく、選択の機会を与える制度であるから、熟慮期間とは、相続人が相続を承認するか放棄するか選択するに当たり、相続財産の調査をして熟慮するための期間であって、相続人は自分が被相続人の相続人となったことを知らなければ、承認も放棄も選択できないと述べました。
そして、最高裁判所は、民法916条の趣旨が、再転相続人の認識に基づいて、最初に亡くなった方からの相続に係る再転相続人の熟慮期間の起算点を定めることによって、再転相続人に対して、最初に亡くなった方の相続について、承認または放棄のいずれかを選択する機会を保障することにあるとして、
民法916条の「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の意味を、「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべき」と判断しました。
再転相続の問題は、相続が複雑に入り組んできますので、分かりにくい部分もありますが、突然、負債があるとして請求があった場合には、相続の放棄を申し立てることで解決することもあります。
そのため、簡単にあきらめる必要はなく、熟慮期間がありますので、素早く行動することが必要でしょう。
事務所外観
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
無料相談については、相続人・受遺者の方の内少なくとも1名が上記エリアにお住まいの場合、または被相続人の最後の住所地が上記エリアにある場合の方に限定させていただいております。
Copyright ©NAGOYA SOGO LAW OFFICE All right reserved.
運営管理 Copyright © 弁護士法人 名古屋総合法律事務所 All right reserved.
所属:愛知県弁護士会