共同相続人A、B、Cのうち、BおよびCが相続放棄をし、Aが土地を単独相続することになったが、相続登記未了の間にBの債権者Dが代位によるA、B、C名義の共同相続登記をしたうえ、Bの持分について仮差押登記がされている場合、A単独名義にするにはどうすればよいでしょうか。
民法939条は、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定めています。
つまり、BおよびCは、相続放棄をしたことによって、そもそも相続人ではなかったことになり、本件土地にかかるBおよびCの共有持分も観念することができません。よって、DがBの持分を差し押さえることはおよそ不可能であり、BおよびCは、Dに対して登記なくして、当然に所有権を主張することができます。
判例(最判昭42・1・20民集21巻1号16頁)も、相続放棄の効力について、「この効力は絶対的で、何に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべき」としています。
では、具体的に、どのようにA単独名義にすればよいのでしょうか。
①の検討からもわかるように、仮差押債権者Dが代位によりしたA、B、Cの共同相続登記は、相続放棄者であるBおよびCの持分に関する限り、実体関係に合致しないことになります。
よって、Aを登記権利者、BおよびCを登記義務者として、登記原因証明情報としてBおよびCの相続放棄申述受理証明書を提供して、A単独名義とする更正の登記を共同申請することになります。
この場合、仮差押権者であるDは、登記上の利害関係人に該当しますので、その承諾書(印鑑証明書付き)の添付が必要です。
Dが任意の承諾に応じないときは、Dに対する承諾請求訴訟を提起し、当該更正登記について承諾を命ずる確定判決を得たうえで、その謄本を承諾書の代わりに添付書類として提出します。
共同相続人A、B、Cで遺産分割協議をした結果、Aが土地を単独相続することになったが、相続登記未了の間にBの債権者Dが代位により、法定相続分によるA、B、C名義の共同相続登記をしたうえ、Bの持分について差押えの登記がされている場合、AはDに対して、遺産分割による所有権の取得を登記なくして対抗できるでしょうか。
民法909条は、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない」と定めています。
民法909条ただし書にいう「第三者」とは、相続開始後遺産分割までの間に生じた第三者を指し、遺産分割後に生じた第三者との関係は民法177条の対抗問題として処理されます。
よって、本件において、分割により相続分と異なる権利を取得したAは、単独で所有権を取得した旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者Dに対し、自己の権利の取得を対抗することができないことになります。
なぜ、前記(1)相続放棄後の不動産の処分の場合とは結論が異なるのでしょうか。
判例(最判46・1・26民集25巻1号90号)は、その違いを次のように判示しています。
「民法909条但書の規定によれば、遺産分割は第三者の権利を害することができないものとされ、その限度で分割の遡及効は制限されているのであって、その点において、絶対的に遡及効を生ずる相続放棄とは、同一に論じえないものというべきである。遺産分割についての右規定の趣旨は、相続開始後遺産分割前に相続財産に対し第三者が利害関係を有するにいたることが少なくなく、分割により右第三者の地位を覆すことは法律関係の安定を害するため、これを保護するよう要請されるというところにあるものと解され、他方、相続放棄については、これが相続開始後短期間にのみ可能であり、かつ、相続財産に対する処分行為があれば放棄は許されなくなるため、右のような第三者の出現を顧慮する余地は比較的乏しいものと考えられるのであって、両者の効力に差別を設けることにも合理的理由が認められるのである。」
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