弁護士 杉浦恵一
※こちらの記事は2023年7月までの情報を元に作成しています。執筆時点以降の事情変更により記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。
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被相続人が亡くなり、相続が開始される際に、遺言書が見つかることがあります。被相続人が生前に遺言書を作成していれば、遺産をどのように分けるかは、原則としてその遺言書の内容に従うことになります。
例外として、最低限の遺産をもらえなかった場合の遺留分という制度や、相続人全員が合意して遺言書の内容とは異なる内容で遺産分割をする場合など、遺言書の内容とは結果的・実質的に異なる内容で遺産を分ける場合もあり得ます。
しかし、これはあくまで例外であり、遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。
しかし、遺言書があった場合でも、その内容が分かりにくい場合、実現が困難な場合など、内容に問題がある遺言書が遺されることもあります。
また、一部の遺産についての分け方のみが書かれており、残りの遺産をどのように分けるか書かれていない遺言となっている場合もあり、そのような一部の遺産の分け方のみを決める遺言があるとかえって相続人間で不満が生じ、紛争になる原因となってしまうこともあります。
そのようにならないように、債権が遺産にある場合には、消滅時効にならないように注意が必要です。
遺言では、相続人の相続分を指定する方法と、特定の財産をどの相続人に相続させるか決める遺産分割方法の指定という方法と、概ね2つのパターンが考えられます。
後者の特定の財産をどの相続人に相続させるか決める内容のことを、一般的には「特定財産承継遺言」と言うことがあります。
この特定財産承継遺言は、遺産の全部について記載することもできますし、一部の遺産のみに関して記載することもできます。
遺産の全部について漏れなく記載されていれば、全部の遺産の分け方・取得者が決まったということで、遺産分割はひとまず終了したことになります。
しかし、一部の遺産のみ特定財産承継遺言が遺された場合には、残りの遺産の取得者は決まっていないことになりますので、相続人は残りの遺産をどのように分けるか、遺産分割協議をする必要があります。
その場合に、既に特定財産承継遺言によって分けられた遺産、取得した相続人をどのように扱うか、問題になることがあります。
まず、特定財産承継遺言によって分けられた遺産は、残りの遺産を分けるに際して、既に分けられた別のものとして計算には含まれないか、全体の遺産の一部の分割として計算に含めるか、という問題があります。
前者の考えでは、特定財産承継遺言によって分けられた遺産は他の財産とは区別して相続されたものとして、残った財産を法定相続分に基づいて分けるよう遺産分割協議をすることになります。
後者の考えでは、特定財産承継遺言によって分けられた遺産も、遺産全体の一部の前渡しと考え、全体の遺産の相続分の一部として計算し、特定財産承継遺言でもらった相続人は、不足があれば不足分のみ残りの遺産からもらえる、ということになります。
遺言などに特に記載がなければ、一般的な被相続人の意思としては、特定財産承継遺言で相続させた財産だけは別と考えることはないように思われますので、そのような明確な記載が遺言になければ、後者の考え方をとることが一般的ではないかと考えられます。
特定財産承継遺言では、分割方法が決められた特定財産の価値が、その取得者の相続分を超える場合と、相続分を下回る場合の2通りが考えられます。
特定財産の価値が取得者の相続分を超える場合、超えた部分に関して代償金を支払うなどの方法で何らかの精算をしなければならないか、という問題が考えられます。
この場合、遺言者(被相続人)は、他の相続人に優先してその財産をその相続人に取得させたいと考え、相続分を超過する部分の精算は予定していないと考えるのが一般的かと思われます。
そのため、特定財産の価値が取得者の相続分を超える場合でも、その取得者は超過分を他の相続人に対して精算する必要はなく、ただし他の遺産は取得できないという結論になりそうです。
特定財産の価値が取得者の相続分を下回る場合、不足する部分に関して他の遺産から不足分を取得できるか、その相続人は相続分と特定財産の差額をもらうことができないか、どちらかという問題が考えられます。
この場合、遺言者(被相続人)は、特定財産の取得者が他の遺産を取得することを禁止する意思までもっていたとは考えにくいところですので、特定財産の価値が取得者の相続分を下回る場合には、その不足分を他の遺産から取得できるということになりそうです。
もちろんこれは解釈による部分がありますので、遺言できちんと分かるように記載があれば、その内容に従うことになります。
いずれにしても、一部の遺産のみの分け方を決める遺言は、残りの遺産との関係で揉めることがありますので、注意が必要でしょう。
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