不動産に対する権利関係は、法務局において「登記事項証明書」(一般的に、登記簿と言われています)で記録されています。
「登記名義人」が死亡した場合、相続人や受遺者は、「登記事項証明書」の名義人を変更する「相続登記」をすることになります。
相続人が「死亡届」を市役所に提出したとします。
しかし、市役所と法務局は別の組織です。
そのため、相続登記が自動的に行われることはありません。
また現状の「不動産登記法」は、
「権利の登記」は義務でなく権利
というスタンスをとっています。
ですから、相続登記は、自ら登記申請を行わなければいけません。
また登記申請は義務ではないことから、登記しないままにされてしまうことがあります。
「相続登記」がされないまま放置され、所有者が不明な不動産が発生しています。
所有者不明土地は、
国土交通省の土地白書によると、2018年に登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地が全国の20.1%もあるそうです。
また、法務局の2017年の調査によると、最後の登記から50年以上経過している土地は、大都市の約6.6%、中小都市と中山間地域の約26.6%に及ぶそうです。
市町村が不動産の所有者を探索するにしても、相続人調査とその連絡のためのコストを負担しなければなりません。
そこで、この問題の対策として民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が2021年4月21日の参議院本会議で成立しました。
なお、改正法は2023年度ごろに施行される予定です。詳細は今後決めていくことになります。以降、令和3年4月時点の情報です。
1. 相続登記の義務化及び罰則の制定 |
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相続人が相続・遺贈で不動産取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化し、違反者は10万円以下の過料の対象となるようです。 |
Q | では相続は開始したものの遺言はなく、相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればいいでしょうか? |
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A | 相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらずに相続登記ができない場合は、
①法定相続分による相続登記をする もしくは、 ②自分が相続人であることを期間内に法務局に申告する (仮に相続人申告登記といいます) どちらかで、過料は免れるようです。 |
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相続人間の遺産分割がまとまらず、速やかに相続登記ができないときは、法定相続分で相続登記を行うことにより、過料を免れることができます。
しかし、そのままだと法定相続分で不動産を共有することになります。
そこで、法定相続分による相続登記後、遺産分割協議を行うことにより遺産分割で取得した相続人は、遺産分割による移転登記を行う必要があります。
この遺産分割による移転登記においても、遺産分割の日から3年以内に登記をすることが義務づけられるようです。
なお、法定相続分による相続登記後、遺産分割による移転登記は、他の相続人の協力がなければ移転登記ができません。
登記の促進のために、法改正により、不動産を取得した者の単独で登記申請することができるようになるようです。
一方、相続人申告登記では、相続人であることを申告した者の氏名・住所などが法務局により「登記事項証明書」に記載されるようです。
これは、被相続人から相続人に権利が移転したということではなく、被相続人(登記名義人)が亡くなったことを示す登記手続きのようです。
この相続人申告登記をした後に遺産分割協議がまとまって相続人が不動産取得した場合は、遺産分割された日から3年以内に登記しなければ過料のようです。
なお、現行法では、相続人に対して遺産を遺贈する遺言があった場合には、法定相続人全員(遺言執行者が選任されているときは遺言執行者)の協力がないと遺贈による移転登記ができません。
協力をしない相続人等がいると義務を履行できません。
しかし、改正後は相続人に対する遺贈に限り、遺贈による移転登記は、不動産の遺贈を受ける者が単独で申請することができようになるようです。
2. 氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化及び罰則の制定ならびに法務局による所有者情報取得の仕組みの制定 |
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住所が変わったのに登記上の住所をそのままにしていると、相続後に登記名義人を調査する際に障害となります。
そこで、不動産の所有権登記名義人である個人や法人の氏名又は名称及び住所又は本店の変更があった場合は、変更の日から2年以内の変更登記申請を義務化されるようです。
違反した者は5万円以下の過料対象となるようです。
また、法務局が、住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記システムから、不動産の所有者が届け出た氏名又は名称及び住所の変更情報を取得し、職権で変更登記をすることができる仕組みを作るようです。
ただし、所有者が個人であるときは、本人への意向確認と本人からの申出を必要とします。
さらに登記記録に記録されている個人の住所が明らかにされることにより、個人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合などの事由があるときは、その者からの申し出により、法務局から交付される「登記事項証明書」に住所を公開せず、住所に代わる事項を記載した「登記事項証明書」が交付されるそうです。
上記の仕組みを行うため、今後新たに個人が不動産登記申請をする場合は、生年月日等の情報を法務局に提供することが義務化されるそうです。
もっとも生年月日が「登記事項証明書」に記載されることはありません。法務局内部において検索用データとして保管されるそうです。
一方で法人の場合は、商業・法人登記システム上の会社法人番号等が「登記事項証明書」に記載されるようになるそうです。
また、国外に住所のある所有者に対しては、第三者を含む国内の連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の申告が義務化され、それらの情報が「登記事項証明書」に記載されるそうです。
住民基本台帳ネットワークシステムで、法務局が「登記事項証明書」上の所有者が死亡していること把握した場合には、法務局の判断で所有者が死亡していることを「登記事項証明書」に記録することができることになるそうです。
ただし、あくまで死亡情報のみを記録するのみで、その相続登記の義務は免れることはできないようです。
所有している不動産の一覧情報(仮称:所有不動産記録証明書)を所有者本人やその相続人が法務局に交付請求できる制度も新設されるようです。
3. 土地の所有権放棄の制度化 |
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相続等により土地を取得した者がその所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させることが可能となる制度を新設されるそうです。 |
対象となるのは、
申請時の手数料と、国が10年間管理するのに必要となる費用を申請者が納付しなければならなくなるようです。
詳細は現時点ではまだ明らかになっていません。
このページの情報は、令和3年4月時点のものです。以降、政令等が決まり内容が異なることがあります。
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