弁護士 杉浦恵一
2021年1月28日、名古屋地方裁判所岡崎支部で、
贈与契約に基づく預金の支払請求が、「公序良俗に反して無効」と判断される判決が出された
という報道がありました
「公序良俗に反して無効」という判断は、最後の手段のようなところがありますので、どのような理由で無効となったのでしょうか。
まず、民法では、第90条で
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
と定められています。
具体的に何が「公の秩序」であり、「善良の風俗」なのか特定するのは難しいところですが、裁判官の社会通念に反する場合と考えておけばいいのではないかと思われます。
同じような規定として、民法では、第1条3項で
権利の濫用は、これを許さない。
この規定を用いて、権利濫用により無効とされることもあります。
この規定は、一応は権利はあることが前提になってはいます。
民法第1条の1項では、
私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
とされ、
同じく2項では、
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
とされています。
権利があっても、公共の福祉に適合しなかったり、不誠実な権利行使は、濫用とされる可能性があることに注意が必要です。
今回の判決では、民法第90条が適用されたようです。
今回の事案をみますと、報道では、身元保証契約を請け負うNPO法人と金融機関が争った事案のようです。
このNPO法人は、
社会福祉協議会が運営していた養護老人ホームに入所中の高齢者と身元保証契約を締結。
その翌月には、『死後に不動産を除く全財産を贈与する』という契約を締結したそうです。
この高齢者が亡くなったため、NPO法人は、
「死後に不動産を除く全財産を贈与によって受け取った」ということで、
金融機関に対して預貯金の全額の支払いを求めて、訴訟を提起したようです。
死後に贈与するという契約は、いわゆる「死因贈与契約」だと考えられます。
民法では、第554条で、
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
と規定されていますので、亡くなった後に効力を生じる贈与契約も、それ自体は有効です。
今回、なぜ金融機関が支払いを争ったのか、他の遺族(相続人)がいるのかどうかは、定かではありません。
NPO法人からの請求を棄却した裁判官の判断では
を指摘し、契約の背景には、市や社会福祉協議会、NPO法人との癒着構造が認められると指摘したそうです。
民法では、『死亡を効力発生とする贈与』も認められています。
死後の贈与自体は有効な法律行為です(その行為自体が効力を生じないというものではありません)。
そのため、なぜこの判決では、請求が棄却されたのかはっきりとはしませんが、報道されていない事実があったように思われます。
例えば、他に相続人がいて、死因贈与を争っていたような場合には、金融機関としては、リスク回避のために争わざるを得ないでしょう。
今回の判決は、かなり特殊な事例だと思われます。
よほどのことがなければ死因贈与は無効とはなりにくいと思われます。
例えば公正証書遺言で遺贈をしていたら、無効とは言われなかったように思われます。
NPO法人は控訴する意向だとのことですので、控訴審がどのようになるか注目されます。
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