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自筆の遺言だとどのように示すか

弁護士 杉浦 恵一

杉浦弁護士 イラスト

遺言といっても、民法では色々と定められています。

民法960条には、「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」とされています。そのため、民法に定めた方式に従わなければ、せっかく遺言書を作っても、効力がないとされる可能性があります。

ちなみに、「遺書」という言葉もあります。「遺書」を辞書で調べますと、死後のために書き残す書面のことを指すとされていることが多いようです。

遺言書と同じ意味だとする説明もあるようですが、民法では「遺書」という言葉を使っていません。

民法では、大まかに分けますと、「自筆証書遺言」(民法968条)、「公正証書遺言」(民法969条)、「秘密証書遺言」(970条)といったものがあります。このうち、自筆証書遺言公正証書遺言が多くを占めると思われます。

今回は、自筆証書遺言が自筆であることをどのように証明するのか考えたいと思います。

民法968条では、その1項で「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と決められています。

法律が改正され、相続財産の目録は自書する必要がないとされています(2項)。そのため、遺産目録は、パソコンなどで作成し、プリントして、自筆の遺言書に添付することができます。

この条文を見ますと、自筆証書遺言の方式として定められた内容は、
①全文を自書する②日付、氏名を記載する③押印する、の3点は少なくとも必要だということが分かります。

しかし、このような形式面ではなく、その自筆証書遺言が、果たしてその本人によって作成されたのか、偽造されたのではないか、という点が問題になることもあります。

筆跡は、人によって違いますが、明確な違いがあるとも言えず、真似することもできます。また、筆跡は、年齢によって変わってくることもありますし、急いでいれば筆跡が乱れることもあります。

最近では、パソコン・プリンター・電子メールが普及していますので、そもそも文字を書かない人も多くいることから、筆跡を比較対照して、確認する材料がないこともあります。

裁判所は、基本的な考えとして、不自然な点がなければ、自筆証書遺言に記載された氏名の人が自書したと推定していると思われます。

遺言書

そのような中、平成29年3月22日、東京高等裁判所で、自筆証書遺言の無効が確認された判決が出されました。

この事案では、被相続人の動画が証拠として出されていたのですが、肝心の遺言書を書いているところの動画はなく、自署を前提とする遺言の確認状況が記録されていたようです。

裁判所は、後日の証拠となることが意識されて新聞が何度も映し出されているのに、被相続人が自書・押印する動作が全く撮影されておらず、添え手を含む何らかの補助を受けて書かれた可能性が否定できないこと等の理由から、被相続人が自書、押印したとは認めず、その遺言書を無効としました。

この事例では、映像がなければどうなっていたか分かりませんが、本人が遺言書を作成したことを証明することは、簡単ではありません。

実印を押して、印鑑登録証明書を添付したり書いているところを映像で残したり、色々と考えられます。

確実な方法としては、公正証書遺言であれば公証人が本人確認しますので、通常は遺言者が被相続人ではないとは言われませんが、本人確認の方法にもよりますので、難しいところです。

このように、自筆証書遺言を作成する際には、遺言者が自分で書いていることをどのように証明するかも意識するに越したことはないでしょう。

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