弁護士 杉浦恵一
相続が発生した時には、いったん共有で登記をしたり、遺産分割が成立すればその内容に従って登記をしたりしていました。
他方で、登記をするにも登録免許税(印紙代)などがかかり、自宅の不動産をそのまま使い続けるのであれば、登記名義を変更しなくても支障がないという場合もありました。
また、山林や田畑など相続人が使用していない不動産については、そのまま放置されることもあったようです。
これは、相続が発生した時に、名義を変更する登記をしなくても特段の罰則がなかったことも、相続に関する登記がなされていない一因かもしれません。
例えば会社法では、役員の任期が満了した場合などに一定の期間内の登記手続きをしなければ、過料(罰金のような制裁金)を課される決まりがありますので、こういった他の法律の決まりと比較しますと、相続に関しては異なる点がありました。
しかし、令和3年に法改正があり、今後は相続が発生し、遺産の中に不動産があるような場合には、相続の登記などが義務化されることになりました。
これは、現在の日本で、相続が発生しても登記されないまま残っている不動産が多くあり、一説には平成28年時点で九州の面積よりも広い面積がそうなっていると言われています。
所有者が不明であれば、その後の土地利用に制限がかかってきたり、不便なことが多いため、対策として法律が改正されることになりました。
今回の相続登記の義務化関連の部分は、公布の日(令和3年4月28日)の後、3年以内の政令で定める日から施行されますので、遅くとも令和6年5月頃には施行されていることになります。
では、具体的にどのような変更があったのでしょうか。
法改正では、
相続や遺贈(遺言などを含む)によって不動産を取得した相続人には、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすること
が義務付けられました。
ただ、遺産分割ができなくなるわけではなく、遺産分割によって相続人の誰かに不動産が集約されることもよくありますので、必ず相続登記をしなければならないと、かえって面倒なことになりかねません。
そういった観点から、相続人が申請義務を簡易に履行することができるように、
新しい種類の登記
相続人登記 |
---|
①所有権の登記名義人について相続が開始した旨
②自らがその相続人である旨 を申請する義務 |
が設けられることになりました。
このような申請をすると、法務局においては、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記として記載することになるようです。
この義務は、
①自己のために相続の開始があったことを知ったとき、かつ、
②その所有権を取得したことを知ったとき、の両方を満たすとき
(つまり遅い方の日)から3年を経過するまでに果たさなければならないものです。
そうしますと、自分のために相続があったことを知らない場合(自分が相続人だと知らない場合)や、相続があると知っていても遠方の土地などで不動産の存在を知らないときには、義務はまだ生じないようです。
ちなみにこの義務に反した場合には、その違反に正当な理由がない場合に10万円以下の過料を課されることがある決まりになりました。
これが相続人1人当たりなのかどうかは今のところ運用されていないので何とも言えないところです。
また、法務省の想定では、相続に関する登記ができない「正当な理由」がある場合とは、
といったことが想定されているようです。
逆に言えば、こういったような場合でなければ、登記をしないことに正当な理由がないと判断されそうです。
これまで相続をしても登記をする義務がありませんでしたが、近い将来にはこのような義務が課されることになりますので、まだ遺産となっている不動産(土地・建物)を相続登記・遺産分割していない方は、早めに手続きを進めた方が無難でしょう。
事務所外観
名古屋丸の内事務所
金山駅前事務所
岡崎事務所
本山駅前事務所
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
無料相談については、相続人・受遺者の方の内少なくとも1名が上記エリアにお住まいの場合、または被相続人の最後の住所地が上記エリアにある場合の方に限定させていただいております。
Copyright ©NAGOYA SOGO LAW OFFICE All right reserved.
運営管理 Copyright © 弁護士法人 名古屋総合法律事務所 All right reserved.
所属:愛知県弁護士会