弁護士 杉浦恵一
身より(相続人)のない方が亡くなった場合で、遺言書がなければ、通常はその財産は 国に帰属 することになります。
ただし、民法(958条の2)では、特別縁故者の制度があり、亡くなった方と生計を同じくしていた方、亡くなった方の療養看護に努めた方、その他特別の縁故があった方は、裁判所に対して、遺産を分けてもらうように請求することが可能です。
統計的には不明ですが、これまでは、特別縁故者としては個人が多いのではないかと思われます。
しかし、社会保険が整備され、老人ホームなどの介護施設に入所し、身寄りがなくそこで亡くなる方も増えてきているのではないかと思われます。
このように、療養介護に努めたのが会社等の法人であった場合には、法人が特別縁故者としての財産分与を申立てし、実際に財産分与を受けることが可能なのでしょうか。
結論的には、過去の裁判例では法人に対して特別縁故者として財産分与を認めた事例があります。
松江家庭裁判所の昭和54年2月21日審判では、被相続人が約30年間にわたって勤務した社会福祉法人が、被相続人の入院後も看護者を派遣し、被相続人が亡くなってからはその葬儀も執り行ったという事例で、社会福祉法人に対して相続財産を分与することが被相続人の意思にも合致すると認定され、法人に対する財産分与が認められました。
また、那覇家庭裁判所石垣支部の平成2年5月30日審判では、法人ではありませんが、老人ホームを特別縁故者として、財産分与が認められています。
この事例では、老人ホームの職員が歩行、入浴、排せつ等の世話・介護を行い、被相続人が亡くなった際には老人ホームの職員が葬儀を執り行い、葬儀後は遺骨をその老人ホームにある納骨堂に安置し、供養をしているといった事情から、身寄りのない被相続人としては、機会があれば世話を受けた老人ホームに対して、贈与もしくは遺贈をしたであろうと推認されるということで、老人ホームに対して財産分与が認められました。
これ以外にも、高松高等裁判所の平成26年9月5日決定では、労災事故により全身まひとなって、長年にわたって介護付きの施設に入所していた方が亡くなった際に、その施設を運営している一般社団法人を特別縁故者として認めました。
この事例では、亡くなった方が首から下のまひになった後で、移動や日常生活での介護、通院の補助・介助、近隣のショッピングセンターへ買い物に連れて行く、レクリエーションへの参加といったことを行い、また被相続人から求められた独自の介護にも協力したということでした。
この施設では、有料の施設で施設利用料が支払われていましたが、それだけで特別縁故者に当たらないと判断するのは相当ではないとされ、結論として財産分与が認められています。
このように、有料で入所する施設でも、手厚い介護等を受けることで特別縁故者として法人が認められる場合もあります。
今後、少子化等により身寄りがなく、施設で亡くなる方も増えてくる可能性がありますので、そのような場合には特別縁故者として財産分与申立てを検討してもいいのではないかと思われます。
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