贈与する人の「死後に財産を贈与する」という意思表示に、贈与を受ける人が合意する契約で、贈与する人の死亡を条件に贈与契約の効力が生じるのが「死因贈与契約」です。
「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方と、何らかの義務・負担をしてもらう約束をすることです。
贈与を受けた方は、相続が発生するまで、その義務・負担を全うし、贈与をした方が、利益を受けるということになります。
具体的には、「土地・建物を贈与するので、残りの住宅ローンを返済して欲しい」「不動産を贈与するので、同居して面倒を見て欲しい」といったケースが多く、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いという意味で、使い勝手の良い制度になっています。
死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、契約内容の実行に疑問が発生したり、相続人間でトラブルが出ないようにしておくことです。
契約内容(特に贈与の対象財産・負担の内容)を明確に記載しておくことが大切です。
契約書を作成する際の注意点としては
口頭で契約した、つまり書面によらない贈与は、その履行が終わらない限り、各当事者がこれを撤回ことができます(民法550条)ので、これは死因贈与契約にも適用されます。そして、死因贈与には遺贈の規定が、その性質に反しない限り準用されます(民法554条)ので、書面によってされた死因贈与にもその方式に関する部分を除いて準用されます(民法1022条)。
つまり、書面による死因贈与であっても、贈与者は、遺言の方式によらないで撤回が可能です(なお、受贈者は契約ですので、一方的に撤回することはできません。)。しかし、負担付死因贈与契約の贈与者による撤回については、その負担が履行されたかどうかで、大きく違ってきます。
負担が履行されていない場合や負担のない死因贈与契約は、遺贈の規定により、贈与者は撤回が可能です。
しかし、負担が全部または一部履行された場合は、原則として贈与者は撤回することができません。
ただし、撤回することがやむをえない「特段の事情」があれば、遺贈の規定により贈与者は撤回出来る場合がありますが、限定的です。
遺言によって行う贈与を「遺贈」と言います。贈与する人の死亡によって贈与の効力が生じる点は「死因贈与」と共通ですが、死因贈与が両者の合意による契約であるのに対し、遺贈は贈与する人の一方的な意思表示であり契約ではありません。
負担付死因贈与契約と遺言における遺贈とは異なる法律行為です。
効力の発生は、どちらも贈与する方が亡くなった後ですが、ご自身の財産を処分することになりますので、意思が明確であることが条件になります。
また、遺贈の場合は、遺言書で遺言執行者を付けたとしても、相続人全員が遺言書に反する内容で協議し、合意した場合、遺言内容を無理矢理実行させることは出来ません。
負担付死因贈与契約の場合は、書面がしっかり作成されていれば、贈与を受ける人も承諾しているため、贈与する人の意思を確実に実現したい場合は、遺贈よりも実行性に優れていると言われています。
ただし、遺言書と同じように、遺留分減殺請求の行使は受ける可能性があります。
遺留分を考慮した設計が必要となるでしょう。
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