遺留分の放棄は、相続放棄とは異なり相続開始前にもできます。
相続放棄は、遺留分の放棄とは異なり、相続開始前にすることはできません。
相続の放棄をするには、相続の開始を知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条、938条)。
相続放棄をした人は、はじめから相続人とならなかったものとみなされますので、遺留分を有しません。
例えば、事業を行っている人が、家業を継いでくれる長男にすべての財産を相続させたいと思っている場合、妻と他の子供達には遺留分放棄をしておいてもらうことができます。
ただし、被相続人に放棄するよう強要されることを回避するため、相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要です
被相続人の配偶者と第一順位の推定相続人
家庭裁判所では、遺留分の放棄が放棄者本人の自由な意思に基づいてなされたものか、他の者からの強制が加わってなされたものではないか、放棄の理由に合理的な理由があるかなどを慎重に検討して、申立の許否を決定しています(大阪家審昭46.7.31家月24巻11号68頁等)。
相続開始前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をした場合でも、その後の事情の変化により、許可審判を維持することが著しく社会的実情に合致しないと認められるときは、放棄者の申立てにより、家庭裁判所は許可審判を取り消すことができると解されています(東京家審昭44.10.23家月22巻6号98頁)。
遺留分の放棄をすると、相続した財産が遺留分に達していなくても、異議を唱えることはできません。つまり、遺留分の放棄がされると、被相続人が遺留分を侵害する遺贈・贈与をしても、相続開始後に遺留分侵害額請求権を行使できないことになります。
共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(民法1043条2項)。
相続人が遺留分を放棄しても相続人の地位を失うわけではありません。遺留分を持たない相続人になるだけです。
そのため、被相続人が遺言しないまま死亡した場合には、遺留分を放棄した相続人には相続権がありますので、遺産分割協議の当事者になれます。
家庭裁判所の許可を得る必要はありません。遺留分を侵害されていても遺留分侵害額請求権を行使しないことよって、事実上遺留分を放棄したことと同じ結果になります。
遺留分を侵害している相続人や受遺者、受贈者に対して「遺留分を放棄します」と意思表示さえすれば、有効なものとみなされますが、後々のトラブルを防止するために遺産分割協議書などにその旨を書いておくと良いでしょう。
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