弁護士 杉浦恵一
令和元年8月27日、最高裁判所で、相続の開始後に認知によって相続人となった人が遺産の分割を求める場合の、請求金額の計算方法に関する判決が出されました。
この判決の内容を見る前に、認知と相続の関係について、まずは確認しましょう。
認知というのは、嫡出でない子(婚姻した夫婦間の子ではない子供)と父親との間の法律上の親子関係を確認する手続きのことです。
母親は、出産の事実によって誰が母親か分かることから、母親に対する認知は想定されていません。
婚姻した夫婦間の子は、その夫婦が親であると推定されますので、一般には出生届を出す際に、その夫婦を両親として届出をするでしょう。
認知は、届出による認知(民法781条1項)、遺言による認知(民法781条2項)、裁判による認知(民法787条)といった手続きがあります。民法787条の但し書きには、「ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りではない。」と定められています。
「この限りではない」に対応する部分は、民法787条本文の「認知の訴えを提起することができる。」ですので、逆に言えば、父が死亡していたとしても、その死亡の日から3年が経過するまでは、認知の訴えを提起することができることになります。
なお、父が死亡している場合の認知の訴えは、検察官を被告として、訴訟提起することになります。
何らかの事情があって結婚せずに子供が生まれた場合、認知をせずにそのまま過ごす可能性は否定できません。
認知の請求権は放棄できないと解釈されていますので、何らかの事情で父親の存命中は認知の請求はできないけれども、父親が亡くなった後ではその事情がなくなり、そこから初めて認知の請求をする、という場合も考えられます。
認知によって法律上の親子関係が発生することになりますが、認知は出生のときにさかのぼってその効力を生じるとされていますので(民法784条)、父の死亡後に認知されることになったとしても、その時点で父の遺産分割が終わっていなければ、認知された子が遺産分割に加わらなければ、遺産分割を成立させることはできません。
遺産分割は、相続人全員で行わなければ効力がないとされていますので、相続人を欠いた遺産分割協議は、成立していないか、無効だと考えられます。
しかし、相続人全員をどのように確認するかというと、一般的には戸籍の記載から確認しますので、認知がされていなければ、本来は相続人として遺産分割に関与すべき人が、関与せずに遺産分割が成立してしまう、という事態もあり得ます。
このような場合に、後で認知によって相続人であることは判明した場合にまで、前に成立した遺産分割を無効として、最初からやり直しをしますと、手続きが大変になってきます。
民法では、910条で「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払いの請求権を有する。」と定められています。
この規定によって、相続の開始後、認知によって相続人となった人が見つかった場合でも、それまでに遺産分割が終わっている場合には、認知によって相続人となった人は、既に終わってしまった遺産分割のやり直しを求められず、金銭的な請求だけできる、ということになります。
このような内容を踏まえて、先の最高裁判所 令和元年8月27日判決では、民法910条に基づいて請求する金額の計算の基になる遺産の価額として、積極財産から消極財産(負債など)を控除するか、しないかが争われていた事案でした。
この点について、最高裁判所は、民法910条に基づいて計算される請求権は、積極財産の価額を基に計算し、消極財産は控除しないと判断しました。
この場合、被相続人に借金があり、認知された相続人以外の相続人が、既に借金を支払ってしまっていたらどうするのか、という問題はあります。
これは、色々な取扱が考えられますが、負債は、法定相続分によって当然に分割されると考えられていますので、自分の法定相続分に基づいて本来支払うべき額よりも多めに借金の返済をした場合、多い部分を認知された相続人に請求するといった方法があります。
民法910条に基づく請求をされた相続人が、借金も支払っている場合には、民法910条に基づく請求権と、多く支払った借金分の返還請求権を、相殺するといったことも考えられます。
事務所外観
名古屋丸の内事務所
金山駅前事務所
一宮駅前事務所
岡崎事務所
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
無料相談については、相続人・受遺者の方の内少なくとも1名が上記エリアにお住まいの場合、または被相続人の最後の住所地が上記エリアにある場合の方に限定させていただいております。
Copyright ©NAGOYA SOGO LAW OFFICE All right reserved.
運営管理 Copyright © 弁護士法人 名古屋総合法律事務所 All right reserved.
所属:愛知県弁護士会