弁護士 杉浦 恵一
本年5月に、所有者不明の土地を一定の条件の下で売却できるようにする法律が制定されました。
ここでいう所有者不明の土地とは、不動産登記簿だけでは所有者が判明しないか、連絡がつかない土地のことを指します。
現在、例えば相続が発生しても、遺産分割をする義務や、相続による登記をする義務が定められていませんので、登記上の所有者が亡くなった方の名前のままになっていることもあります。
自宅であれば、生活する上では、必ずしも名義が変わっていなくても、不便が生じないことはあります。
不動産を売却しようと思うと、名義を変更しなければならないのが通常ですので、そのような場合には亡くなった方の名義になっている土地は思うように売却できません。
そのような場合には困ることになりますが、使うだけであれば、他の共有者、名義人が異議を述べない限り、使い続けることが事実上可能でしょう。
あくまで推計ですが、一説では、2016年時点での全国の所有者不明の土地は410万ヘクタールにものぼると言われております。
九州の面積が約370万ヘクタールと言われておりますので、全国でかなりの面積が所有者不明になっていると推計されています。
そのような土地が増えますと、経済的な不都合が出てくることもあり、管理が出来ずに問題が生じることも考えられます。
このような問題を少しでも解消するために、表題部所有者不明土地の登記・管理適正化法が制定されました。
この法律による制度ですが、主に以下のような内容から構成されます。
この法律により、知らないうちに一部を相続している土地が売却されてしまう可能性もあります。
ただし、この法律である程度の問題が解消できる土地は、かなり少ない割合にとどまるとも推測されています。
この法律では、あくまで問題が発生した場合にそれを解消することが主眼になっており、問題が発生することを抑制するための対策ではありません。
今後は、相続登記の義務化をして、相続が発生したら登記をしなければならなくなる制度や、土地の所有権を放棄する制度など、問題が発生することを未然に防ぐための法律の制定に向けて動きが進んでいくのではないかと思われます。
そのような動きがありますが、相続が発生したら、その都度、遺産分割を行い、土地の名義は変更して、将来に問題を残さないようにすることが肝要でしょう。
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