Q.夫が死亡し、相続人は私と夫の兄弟です。兄弟は複雑で生死も所在も不明です。
今私が住んでいる家は夫名義のため、兄弟たちから何か言われるのではないかと不安です
。私の名義にするためには、どうしたらよいですか?
相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります(民法907条)。しかし、旦那様の兄弟の生死が不明のため、遺産分割協議を行うこと自体困難でしょう。
このように、相続人の一部に生死不明者がいる場合、遺産分割協議を行うため、二通りの方法が考えられます。
不在者について財産管理人を立て、財産管理人に遺産分割協議に参加してもらう方法です。
(1) 申し立て
家庭裁判所に対し、不在者である兄弟の財産管理人の選任など、必要な処分を命ずるよう申し立てます(民法25条1項前段)。
(2) 遺産分割協議
選任後、財産管理人と相続人の間で遺産分割協議を行います。財産管理人は保存行為、利用行為、改良行為等を行う権限しかありません。遺産分割は権限を越える行為で、家庭裁判所の許可が必要になります。
(3) 財産管理人がすでに選任されていた場合
以上は、兄弟が財産管理人を置かなかった場合の話で、財産管理人を置いていた場合は、兄弟との間の委任契約の内容によって決まります。もっとも、遺産分割が委任契約の内容となっていない場合でも、不在者が生死不明となっていれば、家庭裁判所の許可により遺産分割をすることはできます。
失踪宣告により、死亡したものとみなされ、遺産分割協議に際しても、兄弟は死亡したものとして扱われます。そこで、失踪者の相続人が遺産分割協議に参加することになります。また、仮に失踪者の死亡が、お父さんの死亡より早い場合は、代襲相続人である甥や姪が協議に参加します。この、失踪宣告には二種類あります。
(1) 普通失踪(民法30条1項、31条)
不在者の生死が7年間明らかでないときに、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告をすることをいいます。このとき、失踪期間である7年の期間満了時に死亡したものとみなされます。
(2) 特別失踪(民法30条1項、31条)
戦地に臨んだ者、沈没した船舶の在船者など死亡の原因となる危難に遭遇した者の生死が、戦争が終了した後、船舶の沈没した後、その他危難が去った後1年間明らかでない時に、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告をすることをいいます。危難が去った時に死亡したものとみなされます。
今回のケースですと、特別失踪の事情もなさそうです。もともと生死不明の状態にあるように思いますので、普通失踪になると思います。
1の方法は、兄弟のみなさまの生存を前提としたもので、2の方法は死亡を前提としたもの言えます。今回の相談内容ですと、生存している可能性もありそうですので、1の方法を取るべきではないかと思います。もっとも、年齢や様々な事情から2の方法をとることも十分考えられます。
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