配偶者(長期)居住権は、相続財産である居住建物をだれが取得するのかという最終的な帰属の問題でした。
配偶者短期居住権は、遺産分割等で居住建物の取得者が決まるまでの間、配偶者は、その居住建物に住み続けることができるのかという場面で出てくる問題です。
例えば、夫婦で居住建物に住んでいましたが、夫である被相続人が死亡しました。遺産分割は未了で、妻は居住建物に住み続けています。
この時、他の相続人である子供が、自宅から出て行ってください、出ていかないのであれば賃料相当額を支払ってくださいと言ってきたとき、妻はどうしたらいいでしょうか。
また、自宅を第三者に遺贈するとの遺言があったとして、突然その第三者から自宅を明け渡すように請求されたら、配偶者はどうしたらいいのでしょうか。
これまで、このような場合の配偶者の保護について定めた法律はありませんでした。
最高裁平成8年12月7日判決
相続人の一人が被相続人の許諾を得て被相続人所有の建物に同居していた場合には、特段の事情のない限り、被相続人とその相続人との間で、相続開始を始期とし遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される
実務でも上記判例の考えに従って同様のケースでの保護を図ることもあったが、あくまで被相続人との使用貸借契約を推認させただけですので、被相続人が異なる意思表示をしていた場合等、問題があった。
そこで、配偶者が、被相続人の生前居住していた建物に、一定期間無償で住むことができるように保護を図ったものが、配偶者短期居住権です。
配偶者が住み続けられる期間は下記のとおり
配偶者短期居住権は、要件を満たせば自動的に発生します。
配偶者とは、法律上の婚姻関係にある配偶者のことを言います。内縁関係は含みません。
配偶者が、被相続人が有する居住建物に被相続人死亡時に無償で居住していたことが必要です。
配偶者居住権の場合と同じく、被相続人死亡時に、配偶者が入院等していて建物を離れていたとしても、居住建物について生活の本拠地としての実態を失っていなかった場合には、「居住していた」といえます。
はい、配偶者が相続放棄した場合でも配偶者短期居住権は成立します。ただし、配偶者が欠格事由に該当しまたは廃除により相続人ではなくなった場合には、配偶者短期居住権は成立しません(1037条第1項但書)
配偶者が負担すると考えられます。
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する必要があり(1042条において準用する1034条第1項)、固定資産税は通常の必要費だと考えられているからです。
配偶者居住権と異なり、配偶者短期居住権は、登記することができません。
もっとも、居住建物の取得者は、配偶者の居住を妨げてはならないという義務を負っているため、居住建物取得者が建物を譲渡するなどして配偶者の居住の利益が害された場合には、居住建物取得者は配偶者に債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになります。
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