高齢化社会の進展とともに、介護のために老人ホームに入所する人は、今後も増えていくのではないかと思われます。これまでは、自宅での介護が多かったと思われますが、核家族化などで介護ができる人が少なくなったり、遠方に住んでいることで介護に十分対応できなくなったりと、家族・親族での介護が難しい場合もあると思われます。
また、介護保険制度の創設・浸透により、介護施設自体が増えていき、介護施設への入所が一般化していく傾向にあろうかと思われます。
そのような中で、子のうち1人が、他の親族に伝えずに、親を介護施設に連れて行ってしまい、どこの施設に入所しているかも教えてくれないという事例が増えているのではないかと思います。
あくまで感覚的なところはありますが、兄弟が親をどこかに連れて行って、どこにいるか教えてくれない、入所している施設名は分かっても、施設に行くと会わせてくれない、といった事例もあります。
このような事態が起こった際に、どのようなことができるかは難しい問題ですが、横浜地方裁判所の平成30年7月20日の決定(保全異議申立事件)が参考になります。
この事件は、概要としては、債権者(申し立てた側)が、両親の入居している老人ホーム及び債務者(申し立てられた側、別の子)が両親との面会を妨害していると主張して、人格権を理由として、債務者及び同老人ホームを経営する会社は、申し立てた者が両親と面会することを妨害してはならないとの仮処分命令を申し立てたという事案でした。
裁判所は、このような申立に対して、
申し立てた者が両親の子であること、両親はいずれも高齢で要介護状態にあり、アルツハイマー型認知症を患っていることからすると、子が両親の状況を確認し、必要な扶養をするために、両親との面会を希望することは当然であって、それが両親の意思に明確に反して両親の平穏な生活を侵害するなど、両親の権利を不当に侵害するものでない限り、債権者は両親に面会をする権利がある
と判断しました。
その上で、妨害を止めるように命じる必要性については、
両親が入居している施設への入居に債務者が関与していること、債務者が両親の入居施設名を明らかにしないこと、債権者が両親との面会に関連して調停を申し立ててもなお債務者は家庭裁判所調査官に対しても両親の所在を明らかにせず、調停への出頭を拒否したこと、この件の審尋期日においても、債務者が両親との面会に協力しない旨の意思を示したことからして、今後も、債務者の妨害行為により債権者の面会交流する権利が侵害されるおそれがある
と判断しました。
このような決定がなされて、その後、両親との面会が実現できたのかどうかまでは明確ではありませんが、一定の状況の下で、子には両親と面会する権利があることを認めた点では、新しい事例だと思われます。
今後、こういった争いが増加していく可能性もありますし、少子化の下では親族関係をめぐる紛争自体がなくなっていく可能性もありますが、紛争が起こった際には、このような事件が参考になるでしょう。
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