弁護士 杉浦恵一
相続が発生した場合に、遺言等がなく、遺産分割をする必要がある場合には、相続人全員で協議する必要があります。
相続人のうち1人でも欠けていると遺産分割をすることができないことが原則です。
例えば、相続人の1人が高齢で認知症になっていて、自分で財産の処分について判断ができない場合であれば、そのままでは遺産分割ができません。 このような場合には、成年後見人を選任し、認知症の方に代わり、成年後見人が代理して遺産分割の協議に参加することになります。
遺産分割の際に、相続人が破産手続の準備中であったり、個人再生手続の準備中であるような場合も見受けられます。
相続人の中には、借金が多く、遺産を受取っても全て借金の返済に充てざるを得ないような方がいる場合もあり得ますが、このような法的手続をしている、または準備をしているような場合には、どのようにすればいいのでしょうか。
まず、個人再生の場合から考えます。
個人再生とは、借金の一部を免除してもらい、一部を分割で支払っていく、という債務整理の手続きです。
個人再生手続は裁判所で行われますが、個人再生の手続中でも財産の処分などは個人再生をしている債務者が行うことが可能です。
民事再生法では、特に再生債務者の相続放棄や遺産分割協議を禁じるような規定はありませんので、相続放棄や遺産分割協議に参加すること自体は可能だと考えられます。
相続放棄に関しては、民法上の詐害行為取消権に関する裁判例(最高裁判所 昭和49年9月20日判決)で、相続放棄のような身分行為は、相続人の意思からも、法律上の効果からも、既得財産を積極的に減少させる行為というよりは、むしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないことや、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでなく、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、不当であるとして、取消を認めませんでした。
このような裁判例があることから、一般的には、個人再生手続の場合には、相続放棄をすることは自由だと考えられています。
ただし、相続放棄をすることは自由であるとしても、遺産分割で再生債務者が相続しないという遺産分割をしたような場合には、結果としては同じですが、否認されうる行為として、個人再生で弁済すべき金額に本来の相続財産分が加算されると考えられていますので、注意が必要です。
この結果、弁済額が多額になり、個人再生が失敗しますと、最終的には遺産分割協議が否定される可能性も出てきます。
(最高裁判所 平成11年6月11日判決では、詐害行為取消の事案ですが、遺産分割協議は詐害行為取消権の対象になり得ると判断されています)
次に、破産の場合にはどうでしょうか。
相続放棄が身分行為であるという点に変わりはありませんが、破産手続の場合には、原則として破産手続開始決定の時に存在する財産は、裁判所により選任された破産管財人が管理するということになっています。
そのため、破産手続開始決定後に相続が発生した場合には、破産管財人の管理の対象外になりますので、相続放棄するか否かなどは自由になってきます。
破産手続開始前に相続が開始した場合ですが、正式に破産手続が開始する前には、まだ相続放棄や遺産分割をすること自体は可能です。
ただし、破産手続開始の直前に相続放棄や遺産分割をした場合には、その効力を否定される可能性がありますので、注意が必要です。
相続放棄は身分行為のため、どこまで否認することが可能なのかは何とも言いにくいところですが、必ず相続放棄の効力が認められるとは限りません。
なお、破産手続開始前に相続が開始し、相続放棄や遺産分割をしない状態で破産手続が開始しますと、相続財産に関する権利は破産管財人が管理、処分することになりますので、遺産分割協議は破産管財人とすることになります。
例えば、かなり前に相続が発生したが、自宅不動産(土地や建物)の遺産分割をしていなくて、そのままにしていたような場合では、後になって相続人のうちの1人が破産し、破産管財人から不動産の持分の買い取りを求められることがありますので、注意が必要でしょう。
このように、相続の場合でも相続人の破産・個人再生といった債務整理手続きが影響をしてきますので、そのような兆候があれば、早めに対処した方がいいでしょう。
事務所外観
名古屋丸の内事務所
金山駅前事務所
岡崎事務所
本山駅前事務所
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
無料相談については、相続人・受遺者の方の内少なくとも1名が上記エリアにお住まいの場合、または被相続人の最後の住所地が上記エリアにある場合の方に限定させていただいております。
Copyright ©NAGOYA SOGO LAW OFFICE All right reserved.
運営管理 Copyright © 弁護士法人 名古屋総合法律事務所 All right reserved.
所属:愛知県弁護士会