遺言がない場合には、亡くなられた方の遺産について、原則、相続人で遺産をどう分けるのかを決める遺産分割協議をする必要があります。協議の内容は、通常、「遺産分割協議書」という書面にまとめられます。
この遺産分割協議書には、通常、相続人の方の署名、実印での押印がなされ、相続人の方の印鑑登録証明書が添付されます。
実印での押印、印鑑登録証明書の添付が求められるのは、それらを備えた遺産分割協議書であれば、同協議書をもって、亡くなられた方名義の不動産の名義変更や預金の解約等を行うことが出来るためです。
他方、一般的に非常に大事なものとされている実印が押され、かつ、ご本人でなければ取得できない印鑑登録証明書まで添付された遺産分割協議書があるときには、その協議書の内容は無効だと主張することは難しくなります。
しかし、そうは言っても、遺産分割協議書に実印を押し、印鑑登録証明書も添付した遺産分割協議書の内容に納得できないという方もいらっしゃるでしょう。
それでは、どういった場合に、遺産分割協議の効力を争うことができるのでしょうか。
裁判例で遺産分割協議の効力が否定された事例は以下のとおりです。
遺産の一部について特定の相続人が取得する内容の遺言が遺されていたが、その他の遺産については遺言で誰が取得するのか指定されていなかった。そのため、その他の遺産については、本来、相続人で法定相続分に従って分けることになる。
しかし、特定の相続人がその他の相続人に、その他の遺産について正確な説明をせず、かつ、相続税の申告期限を過ぎてしまえば無申告加算税が課される等説明して、特定の相続人に有利な遺産分割協議に応じるよう迫った。
その結果、特定の相続人に有利な遺産分割協議が成立したが、この遺産分割協議は上述のような事情を考慮し、判決において無効と判断された(東京地裁平成11年1月22日判例時報1685号・51頁)。
相続人間で遺産分割協議が成立したが、後日、遺産分割協議書に記載されていない多額の遺産の存在が明らかになった。
しかし、当該遺産分割協議に従えば、記載されていない遺産も特定の相続人が取得することになってしまう。このような遺産分割協議について、裁判所は判決において無効と判断した(東京地裁平成27年4月22日判例時報2269号27頁)。
相続人間で遺産分割協議は成立しているが、それは相続税申告のために便宜的に行われたものであった。この事例では、当該遺産分割協議が相続税申告のためのものであり、相続税申告が終われば改めて遺産分割協議をする旨の相続人間の覚書があった。
そのため、裁判所は、当該遺産分割協議は、そもそも成立すらしていなかったという判断を下した(東京地裁平成25年6月6日LLI/DB 判例秘書登載)。
他方で、内容に不備の無い遺産分割協議書に、間違いなく実印を押印し、印鑑登録証明書も添付しているという場合には、多くの裁判例で遺産分割協議の無効が否定されています(東京地裁平成27年1月28日LLI/DB判例秘書登載等)。
また、遺産分割協議の効力が否定された前記(2)の裁判例も、ご一読いただければわかるように、特殊な事情があることが判決の決め手になっています。ただ、当該裁判例も、特殊な事情だけが判決を左右するわけでもなく、様々な事情が考慮された結果、遺産分割協議の効力が否定しているのであり、特殊な事情が似ている別の事例でも同様に遺産分割協議の効力が否定されるとは限りません。
このように、遺産分割協議の効力を後から争うことは非常に難しいといえます。そのため、ご自身の相続の権利を守るという観点からは、何よりも、安易に遺産分割協議書に署名しない、判を押さない、他の相続人に印鑑登録証明書を渡さないということが、重要なことと言えるでしょう。
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