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所有者不明土地対策の方向性

弁護士 杉浦 恵一

2019年11月26日の日本経済新聞(夕刊)の記事で、法制審議会がまとめる所有者不明土地対策の原案に 関する記事がありました。

早ければ、2020年の秋頃には、相続分野に関する民法と不動産登記法が改正される可能性がありそうです。 現在考えられている方向性としては、


1

相続登記の申請を簡単にした上で、相続登記を義務化する。

この際に、一定期間に登記しなければ、罰則が科される可能性があるようです。

2

遺産分割の協議は、相続開始から10年以内にしなければならない。

相続の開始から10年が経過すると、法定相続分が確定してしまう。

3 土地の所有権を放棄することが可能になり、放棄された土地は国が引き受けることになる。

といった制度変更が検討されているようです。


相続登記の義務化とは

これをそれぞれ見ていきますと、

まず①の相続登記の義務化は、現在の相続登記をする義務がない状態からの変更と言えます。


例えば、商業登記の分野では、会社役員の変更があった場合には登記をしなければならず、一定期間内に 変更登記を行わなければ、罰金のようなものが科される仕組みがありますので、類似の前例がないわけではありません。


時より、しばらく会社役員の登記変更をしていなかった会社が、何かのきっかけで変更登記をした際に、裁判所 から急に過料を納めるように通知が来て、相談に来られることがあります。

 

会社を経営していても、登記義務についてご存じない方もいますので、裁判所からの通知でも、振り込め詐欺 のようなものではないかと思って相談にいらっしゃるようです。


相続登記の義務化によって何が変わるのか?


現在、相続登記は、義務ではなく、一般的には遺産分割が成立してから行ったり、遺産分割の話をすることが難しい場合に、相続人のうち一人又は一部の人が、何らかの事情で必要に迫られ、法定相続分で登記することがあります。


 

今のところ、相続を原因として登記するには、亡くなった方(不動産の所有名義人)の出生から死亡までの戸 籍と、登記申請時点の全ての相続人の戸籍をそろえる必要があります。

 

本籍が遠方にあったり、何らかの事情で転籍を繰り返している人もいますので、戸籍をそろえることがかな りの手間になる場合もあります。


 

改正予定の内容では、被相続人の死亡を証明する書類(一般には、死亡の事実の記載された戸籍や、死体検 案書などが考えられます)と、申請者が相続人のうちの1人であることが証明できる書類があれば、相続人 全員がそろわなくても相続登記ができるようにするようです。


 

このように現行法よりも簡易的に法定相続分で登記できるようにする代わりに、被相続人の死亡後、一定期 間内に登記をしなければ、罰則を科すという制度にするようです。


  ただ、この場合に、登録免許税がかかることが予想されますので、相続人が複数人いる場合には、誰が登 記申請をするのか、誰が費用負担をするのか、揉める要素になりかねないでしょう。


 

さらに、相続登記をしなかった場合に、罰金が科されるとして、それは相続人全員の連帯債務になるのか、 不動産の存在を知っていて登記をしなかった人だけになるのか、罰金を科される際に相続人全員に通知が行 くのか、といった運用面の問題も未知数です。

遺産分割の期限

次に②の点ですが、遺産分割の協議や申立てがなければ、相続開始から10年経過することにより、法定相続分に従って分割されることになるという話のようです。


現在は、遺産分割の義務はなく、極端な話をすれば、100年前に相続が発生した場合でも、未分割であれば、現時点で遺産分割することが可能です。


確かに、何らかの事情で10年以上、遺産分割されずに名義がそのままの不動産もありますので、期限を10年と区切ることによって、遺産分割協議を進める動機付けにはなると思われます。


遺産には、不動産だけでなく、預貯金や有価証券、貴金属といった動産類もありますので、今回の10年間の期限が、不動産のみに限定されるのか、それとも遺産全般に適用されるのか、それによって話が変わって くる場合も考えられます。

不動産の所有権を放棄できる条件

そして、③の点ですが、現在の民法では、相続人がおらず、最終的に国に不動産等の財産が帰属する場合はありますが、そういった例外を除いて、不動産の所有権を放棄することを認める明文の規定はありません。


なお、共有になっている不動産は、共有持分放棄という規定がありますので、共有者のうち1人を除いて、持ち分を放棄することで土地を放棄したのと同様の効果が得られる可能性がありますが、最後の1人は全体の所有権を取得し、放棄できないことになります。


過去の裁判例では、所有権を放棄したことを基に、国に対して所有名義の引き取りを求める裁判を起こした人がいたようですが、結論としては、山林に関する負担や責任を国に押し付けようとした所有権の放棄は権利の濫用等であって、無効だとされ、訴えた人が敗訴した(つまり所有権の放棄は認められなかった)ようです。


改正法では、不動産の所有権を放棄する条件として、所有権をめぐってあらそいが生じていないことと、管理が容易にできることが条件になるようです。

所有権に争いがなく、管理が容易であれば、通常は売却等をして解決が図られるようにも思われますので、どこまで実効性があるか何とも言えませんが、山林や田畑など、管理が可能であっても使わないから放棄したい土地はたくさんありそうですので、そういった場合に需要がありそうです。

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