弁護士 杉浦恵一
近年、相続や遺産分割への関心の高まりから、遺言を作る方が増えているのではないかと思われます。
日本公証人連合会の統計では、遺言公正証書の作成件数が、平成21年は約7万7,000件だったところ、平成30年には、約11万件まで増えています。
また、最近、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度も開始されましたので、遺言の作成、保管が以前と比べてより簡単になってきているのではないかと感じられます。
遺言を作成する際に、『遺言執行者』を選任するかどうかの問題があります。
『遺言執行者』とは、遺言に記載された内容を実現する者です
もし、遺言に記載がなくても、後で家庭裁判所に、『遺言執行者』の選任を求めることが可能です。
しかし、遺言者が予め、遺言で『遺言執行者』を指定しておくことも考えられます。
『遺言執行者』は、あくまで遺言の内容を実現するための役職ですので、原則として『遺言執行者』が遺産分割協議に関わることはありません。
遺産分割協議に関わる必要がない、関わる権限がないといった方が正確かもしれません。
例外的に『遺言執行者』が遺産分割に参加する可能性は想定することができるかもしれません。
『遺言執行者』が選任される場合、例えば、預貯金や株式など一切の財産を換金して、指定された相続人や第三者に引き渡す、という場合があります。
このような換価・換金まで指定されている場合、『遺言執行者』は、預金の解約や株式等の有価証券の売却が必要になってきます。
では、遺産の中に、誰かの相続分があったとしたら、どうなるでしょうか。
例えば、
父Bさんが遺言書を作っており、その中で第三者Aさんを『遺言執行者』に選任し、「全ての遺産を換金して、相続人に引き渡すこと」を記載していた場合
父Bさんより先に祖父Cさんが亡くなり、祖父の遺産分割が終わらないうちに父Bさんも亡くなったとします。
父Bさんの財産には、祖父Cさんの相続分(相続人としての地位)が含まれると考えられます。
相続分は、相続人以外にも譲渡することができ、相続分の無償譲渡は、金銭的に評価できれば遺留分の計算の基礎となる財産とも考えられていますので、財産としての性質が認められるのではないでしょうか。
このような状況で、『遺言執行者』が全ての財産を換価換金して、相続人に引き渡す内容の遺言になっていた場合、『遺言執行者』は、この祖父の相続分も何とかして金銭化しなければならないとも考えられます。
『遺言執行者』は、民法1012条1項により、
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
と定められています。
また1013条1項により、
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
とされております。
遺産の中に相続分がある場合には、相続人は遺産分割できず、『遺言執行者』が祖父の遺産分割に参加しなければならないようにも思われます。
しかし、遺産分割に参加するといっても、その結果、必ずしも換金に適した遺産を取得できるとも限りませんし、遺産分割が終わるまでかなり時間がかかる、つまり遺言執行の完了までもかなり時間がかかる、という可能性も否定できません。
『遺言執行者』は、民法1014条2項で
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、『遺言執行者』は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
とされています。
ここで引用されている民法899条の2の第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為とは、
相続分の場合、その第2項
前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が、当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
が該当するのではないかと考えられます。
こういった規定もありますので、『遺言執行者』を選任しておく場合でも、換価・換金しにくい財産については、換価・換金まで定めず、単に相続させるだけに留めた方がいいかもしれません。
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