弁護士 杉浦恵一
近年では、ITの発展に伴い、色々なことがウェブ上で完結したり、電子的な対応で完結することが増えてきています。また、実際の現物よりも情報の方が価値を持つような時代になってきています。
例えば、暗号資産(過去の言い方であれば仮装通貨)は、少し前はほとんど価値を持っていませんでしたが、今ではその市場価値は非常に高騰してきています。しかし、暗号資産は何か現物・物としての裏付けはなく、あくまで情報として流通していることになります。
このような現物の裏付けのない情報などを含めて、近年では「デジタル遺産」という概念が提唱されているようになってきました。このようなデジタル遺産は、民法やその他法令の裏付け、定義があるわけではありませんが、今後はますます重要になってくる可能性もありますので、「デジタル遺産」という概念を踏まえて準備を進める必要があるでしょう。
では、「デジタル遺産」とはどのようなものを指すのでしょうか。 「デジタル遺産」に法律上の定義はありませんが、一般論として、被相続人(故人)がもっていた電子的なファイル、データ、情報といったものを指すことが多いのではないでしょうか。
情報は、パーソナルコンピューターやスマートフォン、ハードディスク等の機械・媒体に保存されているものと、オンライン上・ウェブ上に保存されているもの(第三者のサーバー上で管理されているもの)と、大きく分けて2種類に分けることができますが、このどちらも「デジタル遺産」だと言えるでしょう。
デジタル遺産の具体的な例としては、①電子データ(デジタルの写真・動画、文書等のファイル)、②電子メール等のアカウント、③動画共有サイトなどのSNSのアカウント、④有料動画サイトなどの何らかのウェブ上でのサービスのアカウント、⑤クラウド上のファイル、⑥暗号資産、⑦ICカード中のチャージ金額、⑧ウェブ上のポイント、といったような無数の種類のものが考えられます。ウェブ上のサービスの種類だけデジタル遺産が観念されると言ってもいいかもしれません。
これまで遺産といえば、不動産や車、骨とう品などの有体物を想定してきました。株式は株券が電子化されたことでデジタル遺産に移行しつつあるともいえますし、預貯金や貸付金は債権(請求できる財産上の権利)ですので、物としての裏付けがないという意味では、デジタル遺産に近いとも言えます。しかし、これらの財産は遺産分割の方法が確立していますので、遺産分割することに問題は生じにくいでしょう。
他方、上にあげたようなデジタル遺産は、そもそも財産としての性質をもつのかどうか疑問があります。データですので複製ができるものについては、複製をすれば遺産として分割する必要性がないとも言えます。
また、ウェブ上・インターネット上で第三者が提供しているサービスのアカウント等は、そもそも遺産かどうか、相続の対象になるのかという点から疑問が出てきます。
民法では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」(民法896条)と定め、相続により被相続人の一切の権利義務を承継する(引き継ぐ)と定めています。
他方で、一身専属的なもの(例 画家が絵を描く債務などその人でなければ意味をなさないもの)は相続されないとされています。
これはあくまで民法の規定ですので、例えば契約で、相続が発生した場合には契約終了し、遺産として引き継がないという契約もあり得ます。
なお、民法の使用貸借(無料で物を借りる契約)では、使用貸借の終了事由として借主の死亡を挙げていますので、民法でも相続によって引き継がない契約があることは認めていると言えます(民法597条3項「使用貸借は、借主の死亡によって終了する。」)。
近年では、動画サイトからかなりの収益が発生する例などもありますので、デジタル遺産が相当な財産的価値をもつことも考えられます。
このような場合に、デジタル遺産が遺産分割の対象になるのか、裁判所で遺産分割を決めることができるのか、今後の展開に注目する必要があるでしょう。
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