先日、父が亡くなりました。
父は遺言書を残していましたが、その内容は相続人の希望とは違っていました。
せっかく父が残してくれた遺言書ですが、遺言を無視して相続を進める方法はありますか。
実務的には、遺言と異なる遺産分割をする方法がとられています。
ただし、次の点について注意が必要です。
相続人及び受遺者全員が遺言の内容をよく理解したうえで、新たに遺産分割をすることに同意している必要があります。
遺言では、相続開始から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止することができます(民法908条1項)。この場合は、遺言を無視して遺産分割をすることができません。
遺言で遺言執行者が指定されていた場合には、遺言執行者の同意が必要となります。
遺言執行者がいる場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができませんので(民法1013条)、遺言執行者が遺言のとおりの内容で相続手続きを進めてしまうと、複雑な問題が出てくるからです。
そのため、遺言と異なる遺産分割をする場合には、遺言執行者を説得して同意を得ておく必要があります。
遺言執行者の同意を得る場合、遺言執行者が、まだ就任していない場合には、遺言執行者が就任を辞退するだけでいいですが、既に就任していた場合には、家庭裁判所での辞任または解任する手続きが必要となります(民法1019条)。
国税庁のホームページには、遺言と異なる内容で遺産分割をしても、本来の受遺者である相続人から他の相続人に対して、贈与税が課されることにはならないとの記載があります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4176.htm上記内容は、遺言の内容で、遺産を動かす前に遺産分割をした場合のことを意味します。一旦、遺言の内容で財産を分けてしまうと(登記等をしてしまうと)、課税の問題が出てきますので注意してください。
書籍などで遺言書の書き方を調べると、「〇〇に、△を、相続させる」との文例が記載されていることが多いと思います。これを特定財産承継遺言といいます。
このような書き方をした遺言書は、「その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割方法の指定の性質を有するものであり、これにより何らの行為を要することなく被相続人の死亡時に直ちに相続により承継されるものと解される(最高裁平3・4・19)」とされています。
つまり、最高裁の考え方によると、「相続させる」遺言の場合には、被相続人が死亡したと同時に、遺産が遺言書の内容で相続人に承継されることになるため、遺言と異なる内容の遺産分割を有効と解することは、かかる最高裁の考え方と抵触する恐れが出てくるのです。
また、前述のとおり、遺言執行者がある場合は、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。
これらの法律的な問題と、実務では遺言と異なる遺産分割がなされているという現実をどのように調整するのかが問題となります。
なお、東京地裁平成26年8月25日では、遺言と異なる遺産分割協議を無効としています。
東京地裁平成26年8月25日
さいたま地裁平成14年2月7日
東京地裁平成6年11月10日
東京地裁平成6年11月7日
事務所外観
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