Aさんは、亡くなった父が遺言を残していましたので、遺言執行者からの遺言執行状況の報告及び相続税の申告内容を受け取りました。
すると、一部の相続人やその家族に対して、多額の貸金等があり、不審に思って、過去の預金取引を調べました。
その結果、多額の使途不明な引き出しがあることが分かりましたので、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
過去の多額の不明な引き出しがあり、一部の相続人が預金を管理していましたが、遺言書があることから、その点も含めて遺留分として請求できるに留まると考えられました。
そこで、交渉と並行して、遺留分の調停を申し立て、裁判所で過去の引き出し等について明確にするよう、手続きを進めました。
その結果、過去の預金引き出しについては、必ずしも明確にはなりませんでしたが、遺留分として請求する場合、法定相続分よりも割合が少ないことから、過去の引き出しを除いた遺留分に、ある程度の解決金を上乗せしてもらう形で和解が成立しました。
生前の預金からの引き出し、使途不明金については、相続手続の中で、被相続人から引き出した者に対する不当利得返還請求権・損害賠償請求権があり、これが遺産だとして対応を考える場合が多いでしょう。
ただし、遺言があり、全ての遺産を特定の相続人に相続させる内容になっていれば、このような不当利得返還請求権・損害賠償請求権も、その特定の者が相続することになると考えられます。
このような場合には、過去の不明な引き出しの金額も含めて、遺留分を計算し、遺留分減殺請求(民法改正後の遺留分侵害額請求)をすることになりそうです。
約1年
弁護士 杉浦恵一
2021年2月10日、法制審議会が、
土地の相続や登記、管理に関して現行の制度を大きく変更する法改正に向けた答申を出した。
という報道がありました。
今後のスケジュールとしては、
というスケジュールが考えられているようです。
今回、改正が予定されている点は、どのような点でしょうか。
1 | 不動産の取得を知ってから3年以内に登記を申請しなければ、10万円以下の過料が科される。 |
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【before】
現行の法律では、相続が発生し、遺産に不動産がある場合でも、登記することは義務になっておりません。
そのため、遺産分割協議に時間がかかるとか、住む上では名義を変える必要性を感じないとか、どのような理由でも、登記しないことで罰則はありません。
【after】
しかし、今回の改正案では、相続などで不動産を取得したことを知ってから3年以内に登記を申請しなければ、10万円以下の過料が科されるということです。
【所感】
ただ、遺産分割協議にはかなり時間がかかる場合もあり、場合によっては3年で終わらないこともあります。
そのため、遺産分割協議が長期化したような場合にまで、この過料が科されるのか、その点は疑問があります。
2 | 10年間、遺産の分配方法が未定なら法定の割合で分割したことになる。 |
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【before】
現行の法律では、遺産分割をする期限は区切られていません。
いつまでも遺産分割をしない状態にすることも可能です。
場合によっては100年前に亡くなった方の遺産分割をすることもあります。
【after】
しかし、今回の改正案では、相続開始からだと思われますが、10年間、遺産の分配方法が未定になると、法定の割合(法定相続分だと思われますが)で分割したことにされるようです。
【所感】
このようになりますと、ほしい遺産も、ほしくない遺産も、等しく法定相続分で分割することになり、特別受益や寄与分も考慮できなくなるということだと思われます。
かえって不動産が細分化する原因になる可能性もあります。
しかし延々と未分割の状態を放置することによるデメリットが大きいということで、そのようになったのだと思われます。
ただ、この場合も、相続開始から10年経過した時点で、例えば遺産分割調停が続いていて、争いが継続している可能性もあります。
そういった場合などの例外規定が設けられるのかどうかは気になるところです。
3 | 死亡者が名義人だった不動産の一覧情報を発行して親族が把握できるようにする。 |
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【before】
これまで、市町村単位でしか、誰がどこの不動産を所有しているか把握していなかったと思われます。
市町村は、固定資産税を課税します。なので名寄帳や固定資産台帳といった書類で、誰が不動産を所有しているか管理しています。
しかし市町村を超えて、全国的、網羅的に人単位で所有している不動産を確認する方法がありませんでした。
【after】
この制度ができれば、不動産に関しては、遺産の調査がしやすくなる可能性があります。
4 | 土地の所有権を放棄しやすくする。 |
---|
【before】
これまで、土地を放棄することは、明示的には認められてきませんでした。
不動産の共有者が、共有持分を放棄することは可能ですが、不動産を単独で所有している場合、所有権そのものを一方的に放棄するということはできない状態でした。
【after】
今回の法改正では、審査手数料と一定の管理負担金を国に納入することで、土地の上に建物がなく、土壌汚染などがなければ、土地の所有権を放棄(国庫に土地を納める)することが可能になるようです。
これら以外にも、今回、不動産や登記に関して法改正が予定されているようです。
ある程度実務に影響を与えそうですので、すぐに施行されるわけではないでしょう。
どのようになっていくのか、今回の法制審議会の答申に関する動きを注視していく必要があるでしょう。
当事務所を御利用いただいたお客様へのアンケートから、掲載許可をいただいたものについてご紹介いたします。
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父が亡くなった後、相続手続等は何もしておらず、何十年もの月日が経ち、到底解決は困難と思っておりました。
会った事もない親族、考えるだけで気が重くなっておりました。
自分は年をとるばかり、先々子供、孫に残したら増々大変なことになると思い、どういう結果になるのか、不安を抱きつつ、御相談させていただきました。
解決する迄の年月、費用はどのくらいかかるのか?等不安もありましたが、すべておまかせした結果、何の負担を感じることなく解決していただきまして、感謝の気持でいっぱいでございます。
お願いして本当によかったと思っております。
心から御礼申し上げます。有難うございました。
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突然の相続の発生で困りましたが、相談から手続きまですべて滞りなく事務処理をしていただき、ありがとうございました。
書類さがしは大変でしたが、的確なアドバイスをいただき、スムーズにできましたし、いそがしい時は代行して各所に問合せしていただいたり、助かりました。
また、機会がありましたらお願いします。
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どんな質問や相談にも丁寧に対応していただきました。
説明は簡潔でわかりやすく、また客観的な回答は時に自分に不利な内容もありましたが、その分信頼できると思うものでした。メールでの質問、相談に対する返信がいつも速やかであったことも助かりました。
依頼者に寄り添って相談に乗っていただき、その対応は大変満足でしたが、調停時に、協議を早期に整えるためか、時折当方よりも調停委員側に立っていると思える意見がみられ、残念に思ったこともありました。
総じて信頼できる対応であり、必要なときにはまたお世話になりたいと思っています。このたびはありがとうございました。
被相続人:母
相続人:子(依頼者)
Aさんは、母の遺言で母の自宅を相続することになりましたが、自宅以外の財産の取得者が遺言では指定されていませんでした。また、自宅には父が住んでいましたが、Aさんと父の折り合いが悪く、父からAさんに対して、遺留分侵害額請求と遺産分割調停の申し立てがありました。
Aさんは、対応方法に困り、当事務所にご相談にいらっしゃいました。Aさんの希望としては、父に自宅から引っ越してほしいというものでしたが、逆に父は、自宅に住みたいという意向でした。そこで、遺産分割調停で交渉を続け、双方の折り合いのつく点を探り、最終的には、残りの遺産は折半し、遺留分を放棄する代わりに、自宅を父に対して、一定期間、無償で貸すという合意をして、全体的な解決を図ることができました。
約1年
遺言があったとしても、必ずしも全ての遺産の分け方が記載されているとは限りません。その場合、記載のない遺産は、相続人間で改めて分割方法を取り決める必要があります。また、誰かが住んでいる不動産がありますと、その扱いをめぐって揉めやすい傾向がありますので、注意が必要です。
相続関係の民法改正の一環として、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が、令和2年7月10日から開始されました。
これまでは、自筆証書遺言は、自分で作成し、自分で保管するか、誰かに保管してもらうしか方法がありませんでした。
そのため、作成してから相続が開始されるまでの間に、長い時間が経っていたり、災害や火災が起こったような場合には、遺言書がなくなってしまう危険性がありました。
遺言書がなくなれば、亡くなった方がどのような遺言をしたか確認することができなくなってしまい、亡くなった方の最後の遺志が分からなくなってしまいます。
このような事態を避けるために、もともと民法では、公正証書遺言という方法が定められていました。公正証書遺言は、公証人が作成し、原本は公証役場に保管するため、基本的にはなくなることはありません。
しかし、証人が2人必要であったり、公証役場の予約が必要であったり、作成にある程度の費用が必要であったりと、使い勝手が悪い側面もありました。
そこで、法務局における遺言書の保管等に関する法律が制定され、令和2年7月10日から、法務局に自筆証書遺言を預けることができるようになりました。
法務局に自筆証書遺言を預ける方法は、遺言書の四方に一定の余白を設ける必要がありますが、形式的な面(誤字、脱字、日付、署名押印の有無等)を法務局で確認してもらえますので、その点では自分一人で作成するより安心ではないかと思われます。
ただし、遺言の内容自体が適法かどうかの審査はされませんし、遺言の内容が本当に遺言者の真意・気持ちを実現するような内容になっているかどうかも、法務局では審査されません。
そのため、本当にそのような内容で遺志が実現できるかどうかは、弁護士等に相談した方がいいでしょう。
また、詳しくは法務省のウェブサイトの保管制度説明のページに記載されていますが、法務局における遺言書の保管制度には、概ね以下のような特徴があります。
遺言書を作成した後で、内容を確認したくなった場合には、法務局に申請して内容を確認できますし、保管してある遺言を返還してもらうこともできます。
ただし、保管してある遺言を返還してもらっただけでは、遺言の内容そのものを撤回したことにはなりませんので、きちんと遺言書を破棄したり、撤回したことが分かるような遺言を作成するなどする必要があります。
法務局における自筆証書遺言の保管制度は、あくまで遺言の保管方法の一種ですので、遺言自体は自分で作成する必要がありますが、法務局が保管してくれることで、保管の手間や紛失、滅失する危険性は避けやすくなると考えられます。
実際に、法務局に自筆証書遺言を預ける手続きに付き添いましたが、予約をしていけばスムーズに預けることができました。
ただ、その場で遺言書の体裁を確認する必要がありますので、遺言が長文であったり、遺産目録が膨大な場合には、法務局の方で遺言書の体裁・記載内容を確認する時間がかかります。
そのため、遺言書を預けに行くとしても、1, 2時間くらいの時間は余裕をみておいた方がいいでしょう。
Aさんは、父親が亡くなり、Aさんの自宅敷地が遺産であったことから、母親及び兄弟と遺産分割の話をしようとしました。
母親は、遺産がAさんの自宅敷地であるため、Aさんが取得することに賛成しましたが、他の兄弟は連絡が取れなくなり、協議に全く応じないという状態でした。
そこで、Aさんは当事務所に相談にいらっしゃいました。
連絡が取れないということでしたので、代理人からも連絡を試みましたが、実際に連絡は取れなかったことから、そのまま協議を続けても意味がないと考え、速やかに遺産分割調停を申し立てました。
調停が始まると、さすがに兄弟も裁判所に出席しましたが、調停の場では、遺産分割方法の話をせず、母親の介護方法の話を持ち出すという状態でしたので、最終的には、遺産を全てAさんが取得する代わりに、兄弟間で母親の介護方法について一定の条件を約束するということで、解決しました。
遺産分割の話の中で、遺産以外の条件、例えば親の介護を誰がするか、といった話が出ることもあります。
介護自体は、別途決める必要がある事柄だと思われますので、遺産分割で交換条件として何らかの条件を取り決めること自体は、否定されることではありません。
裁判所で遺産分割調停が成立する際に、担当裁判官によっては、遺産分割以外のことを取り決めることが認められる場合もありますし、あくまで遺産分割調停なので、遺産のこと以外については、裁判所の調書に記載できないと言われる場合もあります。
1年間
12月8日に名古屋地方裁判所にて損害賠償請求事件について和解が成立しました。
12月21日に名古屋家庭裁判所にて遺留分減殺請求調停事件について調停が成立しました。
10月12日に遺産分割調停申立事件について調停が成立しました。
10月20日に名古屋家庭裁判所に審判前の保全処分(仮分割)申立事件 について保全処分を申立てました。
9月1日に名古屋家庭裁判所に相続放棄申述受理申立事件について相続放棄申述が受理されました。
8月3日に名古屋家庭裁判所に相続放棄申述受理申立事件について家事審判を申立てました。
7月2日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に相続放棄申述受理申立事件について家事審判を申立てました。
5月1日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に遺産分割調停申立事件 について家事調停を申立てました。
5月27日に名古屋家庭裁判所に遺産分割調停申立事件 について家事調停を申立てました。
4月8日 名古屋家庭裁判所岡崎支部に相続放棄申述期間伸長申立事件 について家事審判を申立てました。
4月8日 名古屋家庭裁判所に遺産分割調停事件 について調停が成立しました。
4月9日 名古屋家庭裁判所に遺産分割調停申立事件 について家事調停を申立てました。
4月23日 名古屋家庭裁判所岡崎支部に相続放棄申述申立事件 について家事審判を申立てました。
3月23日 名古屋地方裁判所にて、損害賠償等請求事件について和解が成立しました。
2月6日 名古屋家庭裁判所に、相続放棄申述申立事件について相続放棄申述が受理されました。
2月14日 最高裁判所に、遺言無効確認事件について上告しました。
2月14日 名古屋家庭裁判所に、遺言書の検認申立事件について家事審判を申立てました。
2月14日 岡山家庭裁判所にて、相続財産管理人選任申立事件について審判が出ました。
1月28日 名古屋家庭裁判所に、相続放棄申述申立事件について家事審判を申立てました。
1月31日 名古屋高等裁判所にて、所有権移転登記手続等請求、遺言無効確認請求控訴事件について判決が出ました。
Aさんは、被相続人の孫でしたが、以前から祖父母と養子縁組をしていました。また、Aさんの父親(祖父母の子)は昔に亡くなっていました。
ある時、Aさんの祖父が亡くなり、Aさんが代襲相続人として遺産分割に関わる必要が発生しましたが、被相続人の配偶者は認知症で遺産分割の意思表示ができず、もう1人の相続人であった叔父(Aさんの父の兄弟)は、被相続人の遺産を管理しており、遺産分割自体に反対していました。
このような状態であったため、Aさんは、当事務所に相談にいらっしゃいました。問題点として、被相続人の配偶者に認知能力がないことと、相続人のうちの1人が遺産分割に反対しているという問題がありましたので、まずは被相続人の配偶者に成年後見人を選任する申立てをしました。
そして、相続人のうちの1人が遺産分割に反対していても、最終的には遺産分割ができるよう、遺産分割調停を申立てました。これによって、最後は遺産分割に反対していた相続人も、遺産分割に応じ、遺産分割が成立しました。
約4年
高齢化社会の進展とともに、遺産分割する際に、相続人のうち誰かが認知症になっていて、遺産分割の意思表示ができない可能性もあります。そのような場合には、速やかに成年後見審判の申立などが必要になるでしょう。
また、場合によっては、相続人の中に遺産分割に反対する人がいる可能性もあります。そのような場合、話し合いができないこともありますので、最終的には分割方法を裁判所に決めてもらう覚悟で、遺産分割調停の申立ても必要でしょう。
より良いサービスのご提供のため、相続の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,羽島郡(岐南町
笠松町),本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町
池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町
川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
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